2012年春号

のれんメール

illust05.jpg寒い寒いと思っているうちに、三月、四月、五月に入りました。不思議なことに、もう春だと思うと、華やかな気分になり、山川草木、森羅万象、全てが新しく感じられ、息吹さえも新鮮です。
 関西では、お水取りが終わらないうちは、本当の春は来ないと言われております。僧が大松明をふりかざして、炎々たる焔の中で行われる、奈良東大寺二月堂のお水取りの儀式は壮観そのものです。
 物みな春の陽気を受けてよろしい真味をもたらします。これを伝統の手技で心を細かく工夫しておいしい物をつくる季節でもあります。と、ともに気温が上ると、我々の仕事も難しくなります。老舗の技を集中して極上の品をつくるように努力いたしまして、御賞味に値いする仕事をして、御愛顧におこたえいたします。御用命をお待ちしております。
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花物語 シクラメン

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長姉は、健康を損ね、数年間入退院を繰り返し、そのたびに家族は勿論、私達兄妹も一喜一憂をしていた。集中治療室で、最先端をゆく医療器具に囲まれていた。
やっと個室に戻れたということで、駆けつけてみると、「じっと寝たままでいると、さぞ足が痛かろう。だるかろう」と義兄が、姉の足をさすってあげていた。
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株式会社 松前屋<こんぶ>

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子どもたちが、大きくなって、お弁当づくりをしなくなったが、ときどき当時のあの朝の忙しさを懐かしく思い出すことがある。
おむすびの海苔巻き、玉子焼き、火を通したカマボコ、ウインナーは定番で、肉の甘辛煮、焼いた紅鮭に、必ず添えるのは、<松前屋>のゴマ入り短冊昆布。短冊に切ってあるから、子どもにとってたべやすい。味もさして辛くない。ゴマの香も芳しい。食欲のない時でも思わず全部食べてしまうらしい。
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菊正宗酒造株式会社

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ずいぶん昔のことになるが、卒業して就職した会社が、酒精アルコールのメーカーで、最大手のお得意様が、<菊正宗>であった。酒どころの灘五郷、伊丹、伏見、奈良をはじめ北陸その他関東以西の酒造会社を担当する大阪支社の酒精課は、連日連夜販売合戦に明け暮れていた。女子社員だとてのんびりしてはおられない。他の課の者も手伝えることは手伝って、全社をあげてとりくんでいた。
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旬の味     桜に因んで

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 季節の移ろいは速く、花は慌ただしく、咲いたと見る間もなく、夜来の雨風にさらされて散ってしまう。散ればこそ惜しまれる桜の花は、凄絶な美しさの中に、華やいだ雰囲気を醸しだす。この季節のもので、美しいもの、可愛いものに冠せられるサクラの言葉は、日本人の魂を見る思いがする。

 

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