2019年夏号

のれんメール

img9_illust05のれん令和1年6.7.8.9月号

                      

かたつぶり角ふりわけよ須磨明石       芭 蕉(六 月)
虹立ちて逃げて行く広野かな         虚 子(七 月)
木曾山へ流れ込みけり天の川         一 茶(八 月)、
火の山の立ちふさがれる花野かな       迷 子(九 月)

              
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海藻の四季 ①

わかめ 海に近い所に住む人々は古くから海藻を食べてきた。海藻が、健康に大きく貢献していると認められたのは、そんなに古いことではないが、日本人は比較的海藻が好きで、古代より食べてきたとされ、おそらく食べる量は世界でも多い方と言われている。
                   
★初春の目出度さを海苔雑煮で、お祝いするのが、山陰松江地方の人々の習わしで、正月二日はすまし雑煮になま海苔をたっぷりと入れたのを、食べると聞いたこともある。今もその習慣は、残されているのだろうか?
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海藻の四季  ②

こんぶ 我々が日頃食べ馴染んでいる海藻はアサクサノリとコンブだが、アサクサノリは関東で、コンブは関西で殊に好まれていたが、戦後、東西共に双方の海藻のよさが理解されて、重宝されるようになった。
▲コンブの成分はおよそ50%が炭水化物で、そのうち20%は繊維で、残りはアルギン酸と呼ばれるもので、この他にマンニットを含み、マンニットはコンブの表面に白い粉のようになって現れる。
 コンブの旨味は化学調味料を、つくりだすヒントを与えたことは知られているが、この味のもとはグルタミン酸ソーダ塩で、20度Cの水の中に30分~60分コンブを浸しておくと、臭くない煮出し汁が出来る。これはグルタミン酸ソーダが水に溶けて出たものである。
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●老舗と私  <美々卯> うどんすき

WS000001 遠い昔にさかのぼる。新入社員として、大手メーカーに入社した間もなくのある日、課長から「金曜日の会社がひけてから、君たち新入社員の歓迎会を、<うどんすき美々卯>でするから、その心算でいるように」といわれた。当時、外食することもなかったので、店の名前も知らなかったし、女子社員同士で、「うどんすきって知ってる?」「すき焼きなら知ってるけど、私の家ではすき焼きの後の、美味しい残り出し汁にうどんを入れて、少し煮て生卵につけて食べるの。とても美味しいのよ」「私も知らないけど、でも<うどんすき>、とうどんの名前が前についているからには、<うどん>が主なのよ」「まあ、楽しみにしましょう」ということで、当日を迎えた。
 母は、好き嫌いの多い私のことを心配して「とにかく、初めが肝心だから、お行儀よく好き嫌いを言わずに、残さず全部、綺麗に、戴きなさい」と其の日の朝まで案じていた。
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●老舗と私 <大寅> 蒲鉾

WS000002 新卒で、会社へ勤めた年の暮れに母から「貴女もそろそろ大阪に詳しくなったでしょうから、会社が引けてから、地下鉄の難波で降りて<大寅>へ行ってお正月用の蒲鉾を買ってきて」と言われ、行き方の地図とお金を渡された。
 行ってみると、なんとそこは黒山の人だかりで、若かった私には、かき分けて前へ行く度胸もなく、
半ば茫然と立っていた。すると、元気そうなお婆さんが「あんさん、いつまで其処に立っていても、あきませんで、付いてきなはれ」と腕を掴んで巧みに人を掻き分けて、前に連れて行ってくれた。ニッコリ笑って「さあ、ぐずぐずせんと、早く買いなはれ」と言いながら。素早く注文していた。私も夢中で、母の書いたメモを渡して「これだけ下さい」黒山の人をぬけ出した時は、冬だと言うのに大汗をかいていた。
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