●老舗紹介

25378579_m★米忠 味噌
 宝暦年間より、大阪・江戸堀にて米屋を営み、自家製造していた味噌を、親しくしていた人たちにお配りしていたのが、あまりにも美味なので、評判になり、次から次へと依頼されるようになって、味噌を専門に手掛けるようになり、現在に至っている。

 以来、<米忠味噌>と名づけ、「食い倒れ」の大阪の味文化を担って、味噌と言えば、即<米忠>と返事がはね返ってくるほど、親しまれているのである。大阪の気候と大阪人の嗜好に合わせて、文政三年創業以来、約二百年、年々工夫を重ねて「大阪の味噌」として出来上がったものである。
 絶大な評価を得て、信頼されて使われている<米忠味噌>は大正天皇。昭和天皇がご来阪された際にご膳に供される栄誉に輝いた。
 正月のお雑煮は関西では、「白味噌」と決まっていたが、我が家では、現在でも<米忠の白味噌>で新年を祝っている。
                       
 酵素を利用して、大豆の蛋白、脂肪と、米のデンプンをブドウ糖とアミノ酸に分解し、塩で保存性をもたせてある味噌は、理想的な健康保存食品である。因みに毎日味噌汁を食べている人は、ガンにかかりにくいとか。それは、ガンのもとを抑える抗変異物質が味噌に含まれているからである。
 抗変異物質とは、脂肪酸とエチルアルコールエステルが結合した、脂肪酸エチルエステルで、その中でもリノレン酸エチルエステルが、最も強力であるという。
 味噌には7~8%の脂肪があり、そのうちの6%が、脂肪酸エチルエステルになる。味噌汁一杯の中には、約10㎎の脂肪酸エチルエステルが含有されていて、ガンを発生させる変異物性が強いベンツピレン5㎎を消去させる力をもっているらしい。これは生大豆の中になく、味噌の醸造過程で生成するとみられている。 
 これほど重要な食品づくりに<米忠>では防腐剤や添加物を使用せずに、伝統と秘伝の技法で、味噌づくりをしている。
 昔は、近江米・備前米で麹(こうじ)を作っていたが、現在は全国的に品質が向上しているので、産地にこだわらず、むしろ品質が一定している優秀な米を仕入れている。
 良質の大豆を一晩つけて二度蒸しする。二度蒸しすることによって、大豆の色が濃くなり、<米忠>の「赤出し」になる。
 味噌は昔から一年以上仕込んだものを製品としていて(白味噌は例外)冬の低温の中で、ひっそりと静かな醗酵と、夏の高温での激しい醗酵に、春、秋それぞれの温度の変化が、自然にまかせて醗酵さすことによって、その土地の風土に合った味噌が出来上がるのである。
 上方料理とともに育てられた<米忠>の味噌は、料理味噌として、自他ともに認められている。
                                       梶 康子