●寒の味

14332 最も寒い期間を<寒>というが、此の季節は飲食に関係が深い。暦で二十四節気小寒から立春までの約一ケ月間を<寒>いう。酒・味噌・醬油など寒中に操作したものを寒仕込みといい、最も優良とされている。寒酒、寒餅も実際に美味賞味とされ、寒水に漬けておけば柔らかく腐敗しないといわれている。寒卵・寒ブリ・寒ゴイ・寒ブナ・寒シジミ等「寒」の字のつくものは美味とされた。貯蔵用カキモチは、必ず寒中に搗くことになっている。

★シジミ 寒シジミは味が良く、土用シジミは腹ぐすりと言われている。
 しじみには、淡水にすむマシジミと淡水でも琵琶湖にしかすまない小粒のセタシジミとある。それと海水が混じる水域にすむヤマトシジミの三つが代表的な種類。
 ◎シジミ汁にすると、春はセタシジミ・夏の土用にはマシジミ・冬の寒のうちはヤマトシジミが美味。市場への出廻りが最も多いのがヤマトシジミで、外形が丸みをおびている。  
 主な産地は山陰の宍道湖、伊勢湾に木曾、長良、揖斐の三川が合流して注ぐあたりで、宍道湖には殻が黒シジミとベッコウ色をした二種類がいる。黒いのは泥質の水底にすむ大粒の成貝で、日持ちがよい。ベッコウ色をしたのは砂底にすみ、小粒の幼貝が多い。この方が見た目が良いので、料理屋などに回されるが、味については大差はない。
 旨味の成分はコハク酸で、含有量は貝類の筆頭で、ハマグリの約三倍もある。アミノ酸、カルシュウム、ビタミンB2、ビタミンB12も豊か。良質のタンパク質を含み、肝機能を助けるメチオニンも含む。
                     
●節分の味
★福豆 立春の前の日が節分。本来は春夏秋冬が立つ前日にそれぞれの行事をしていたが、室町時代ごろから立春前日の節分だけが、特に重んじられるようになった。鬼に豆を打つ風習は、中国の明時代に盛んに行われ、日本に伝わって厄祓いの豆まきの行事になったといわれ、その時にまく豆<大豆>を福豆という。
 大豆は植物性蛋白質・脂肪に富む栄養食品で、味噌・醤油・豆腐・湯波・黄粉・納豆、その他料理用・菓子材料・油脂原料として用途が頗る広い。
★鰯・いわし 節分の鬼祓いの行事として、門口に鰯の頭をヒイラギに刺しておく風習は、昭和時代の前期までは行われていたが、最近はわが家でもしなくなったし、めったにお目にかからなくなった。鬼が鰯の焼いた匂いを嫌うからだという説があった。
 鰯を食べる習慣はまだ残っているようだ。産卵期には陸岸近く寄ってくるので、大量に漁獲され、ニユースになったりもするが、昔は安価だったが、今は漁獲量も減少している傾向で、高値になってきている。
 栄養価は、蛋白質21,40%、脂肪6,70%、カロリーは、主要水産物のトップとして、生食は勿論メザシ・塩物・煮干し・燻製・缶詰等の加工品が近年高く評価されるようになった。
                                    東 雲 宣 子