●旬の食べ物百科 二月 ◎節分

23080463_m 二月は「如月」の呼び名があるが、一番寒い季節に、着物を着てもまだ寒くて、更に着重ねるということから、「きさらぎ」と名づけられたという説もあるくらい暖房設備が整っていなかった頃は、鍋物で身体を温めて、凌いだ日も多かったのであろう。
 ここのところ、新型コロナ・ウイルスにより、衛生面からあまり歓迎されなくなった。せめて、「おでん」を取り囲み、各々がとるのでなく、一つの菜箸で、各自の皿に好みのものをとり分けて、楽しむことになるだろう。
                   
●福豆
 二月と言えば先ず行事として、節分がやってくる。立春の前の日が節分で、本来は、春夏秋冬にそれぞれの節分の行事をしていたらしい。室町時代の頃から、立春の前日の節分だけが、特に重んじられるようになった。
 鬼ばらいの行事・門口にイワシの頭をヒイラギの木に刺しておく習慣は、鎌倉時代までは、旧正月の行事だった。鬼に豆を打つ風習は、中国の明の時代に盛んだったが、日本に伝わって厄祓いの豆まきになったといわれる。この時にまく豆を福豆といい、一家の年男または、主が「福は内、鬼は外」と言いながら豆をまく。
 その後で家族は、それぞれの年齢より一つ多く豆を食べる。来年もまた福豆を息災で食べられますようにとの願いを込めて食べるのである。
                             
●鰯(いわし)
▲何故鰯の頭を節分の日に門前に刺しておくのか?
 それは、鬼が鰯の頭のにおいを嫌うからだという説がある。鰯でもマイワシの干物。それも日が経ったもので、脂肪が酸化して脂焼けした鰯で、焼くと強く臭いので鬼は嫌う。鬼ならぬ人間でも閉口する。
 節分には、ヒト塩の鰯や塩焼きのマイワシを食べるが、干物で美味しいのはウルメ鰯で、脂が薄いので、脂焼けしないし、クセもない。生よりも干物のほうが、値が高く、味はマ鰯よりも美味。
 鰯を塩焼きする時は、生に早くから塩をふると、塩の浸透圧で鰯から水分が抜けて、バサバサの感じになり味が落ちる。食べる少し前にパラパラとふり塩をするとよい。
                           
▲何故節分に鰯を食べるのか?
 一節によると、本音はメデタイの鯛(タイ)でお祝いをすべきだが、鯛は高価で、庶民の口には中々入りがたく、せめて安価な鰯でもいいから、尾頭づきの魚が食べられますようにとの切実な願望が込められているのというのである。           
                                    葛 城 陽 子