●旬の食べ物百科 一月 ◎食摘(くいつみ)

2169241_m ある書物を読んでいたら「食摘」と言う言葉が出てきた。懐かしい言葉である。最近聞いたこともないし、私自身も使った記憶もない。わずかに「季語」として、俳諧の季題として残っている。
     
 古来より伝わってきた、新年の祝饌のことで、年のはじめに三方台、あるいは四方台に、米・餅・橙・乾柿・搗栗・のし鮑・昆布・海老・ゴマメ・カズノコ・シダ・ユズリハ・ホンダワラなど、種々の縁起物を盛って食摘台と名づけた。初春の佳例として、家族で祝い、年賀客にも供する慣わしであった。
 最近になって、形式化され儀礼的な床飾りになり、実用的には別に調理して、重箱に詰めたりするようになった。つまり床飾りを<蓬莱>重箱料理を<おせち>といって、分離されたのである。
 <蓬莱飾>も今は、ほとんど行われず。四方台には餅、昆布、乾柿、橙、ユズリハの程度になっている。関西では「うらじろ」も使う。
 食摘台にのせられた食品は、地方により、また家風により種々の縁起物が選ばれて、必ずしもこれでなければならないということはないけれど、基本となるものは米・昆布・果実とされた。米は野のものを代表とし、昆布は水産、果実は山のものを代表で、野、海、山の幸を取り入れて祝う。
                          
●七草粥
 太古の七草は米・麦・ひえ・粟・きびの五種に若草二種を混ぜたものであったらしい。
 江戸時代から七草はセリ・ナズナ・ゴギョウ(母子草)・ハコベラ・仏の座・(タビラコ)・
ナズナ(カブラ)・スズシロ(大根)の七種を七草と呼ぶようになった。
これは中国の風習で、七種の菜を、おかゆの中に入れて煮込んだものを食べると、年中の疫病を防ぐということから伝わってきたものである。
                         
●鏡開き
 鬼宿日といって、蔵を開く日とし、鏡餅を割って祝う。鏡餅は包丁を使わず手で割る。
 この餅をぜんざいや、しるこ等に入れて家族で祝う。お供え物を戴くと、家族中の一年の無事息災が約束されるということからの習慣である。いわゆる直会(なおらい)の思想からの儀式である。
                           
●小豆がゆ
 十五日は小正月といい、正月の行事が、無事終えたことを、小豆粥を食べて祝う。
 正月粥の特徴は、七草がゆも小豆がゆも、餅を入れることである。 
                                   東 雲 宣 子