●老舗と私

sake★西宮酒造株式会社  ☆日本盛  清酒
 親から子へと代々伝わる世襲制を慣習としていた酒造業界にあって、初めて会社組織の清酒メーカーとして発足したのが明治22年、29年には、西宮酒造株式会社と改称、順調に販売石数を伸ばし、44年には、全国一の造石高を誇るまでに成長した。その後も発展の一途の盛業ぶりであった。
 昭和20年戦災に会い殆ど焼失したが、再建され、創業以来130年、伝統を積み重ね、技術を磨き現在に至る。
 

 私が若かった、ずい分昔、勤めていた会社の出身者が社長をされていたということを聞いていたので、遠い親戚のような親しみを覚えていた。西宮の本社を訪ね、色々お話を聞かせて戴いたこともあった。
                             
 <日本盛>は、灘五郷の西宮郷に位置して宮水井戸地帯(西宮神社のすぐ側)に近接しており、地下のパイプを通じて、宮水が直接工場内に引き込まれている。位置的には非常に恵まれているのである。
 宮水とは、六甲山系の清冽な水が伏流水となり、この辺り一帯の貝殻層を通過することにより、そこから流れ出るカルシウムやリン酸やカリ分を多く含み、酒造りの醗酵を助ける栄養分が多く、お酒に色をつける有害成分の鉄分が少なく、天与の霊水といわれている。
                              
 灘の銘酒<日本盛>は、宮水と、酒造りに最適とされる<山田錦>と呼ばれるお米、丹波杜氏による優秀な技術集団、醸造に程良い寒気を運ぶ、六甲おろしにより、自然の恵みと培われた伝承、最新の科学との調和により、造られたものである。
 玄米~精米~洗米~蒸米~(製麹・酒母)~仕込み~もろみ~圧搾(原酒と酒粕に分ける)~熟成~濾過~調合~熱殺菌~詰口~製品。これらの工程が全て超近代化され、昔の面影は全くない。全て管理されているので、昔のような、お酒の出来、不出来はない。
 <日本盛>の製品は一升ビンをはじめ、どっしりとした黒いボトル、紙パック、ペットボトル、サカリパック等、時代のニーズを先取りし、コンダクト志向、アウトドア志向にいち早く取り組み、約350種もあると言うから驚いてしまう。
 創業以来の進取の気風と誇りが、工場内の至る所で受け継がれているのを感じた。
                                
 飲み会で、<日本盛>が出てくると、「お酒の通の方は日本盛のことをサカリというのよ」と言うと彼女たちは、「サカリ追加」とか思いのほかノッテきて驚いたこともあった。また工場を見学させていただいた時の感想を話してあげると、盛り上がり、会話も弾み、より楽しい飲み会になった。
                                      梶 康子