菊正宗株式会社の記念館館長・村田 祥さんより<おいしく日本酒を楽しみましょう>とのテーマでお話しを伺った。先号の続き。その2.

sake日本酒は温めることで一層香りが際立ち、日本酒独特の穏やかでほのかな香りが広がる。また、味がより一層豊かになると共に、魚料理の生臭さを消す働きが強くなり、一般的に料理の範囲が大きく広がる。

<なぜ燗酒はおいしいの?>
1、 人間の味覚の感度(鋭い・鈍い)が温度によって大きく影響を受ける。
温度が上がると、塩味、苦味、渋味は弱くなり、甘味、酸味はゴク味に変化する。
甘味は丁度体温付近の37~40Cで最も強く感じる。
それ以上は、甘味はやや弱くなるが、旨味の成分としてゴク味を形作る。
温度が高くなると、塩辛味、苦味の感覚は弱くなっていく。
渋味も温度が高くなるにつれて、弱くなっていく。


2、 温度そのものの感覚が、おいしい・まずいに影響する。
一般的においしいと感じる温度帯は25~30cといわれている。
温めて食べる料理や飲み物は60~65cがおいしい。
ただ、お酒の場合、60c以上に温めてしまうと、香味のバランスが崩れる。
3、「燗上がり」する。
  一般的に、乳酸やコハク酸、アミノ酸など日本酒の旨味の成分は温めることに
よって旨味が増すように感じられることが知られている。
生もと等で造った本醸造酒や純米酒は、コハク酸や乳酸が多く含まれ、ペプチドや
アミノ酸組成がバラエテイに富んでいる。このタイプのお酒は、温めることによっ
て、旨味成分がうまくバランスして、おいしく感じられるようになり「燗上がり」
すると感じる。
4、 お酒は飲む温度によって働きが違ってくる。
温めたお酒は、旨味・コク味を増して、料理を一層おいしくするとともに、魚介類
の臭みを消し旨味に変える働きがある。
暖かいお酒はアルコールの吸収も早く「ほろ酔い」が長く続き、素早く身体を温める。
5、 おもてなしの心が感じられる。
お酒を温めて出すという行為が「一手間かけてもてなす」という意味を持っている。

★年初めのお目出度い行事に甘辛のれん会の老舗のお酒で<おもてなし>を。梶 康子