季節のもの

nabe 旬とは? 美味なものを食べようとするには、今、現在何が旬であるかを知らねばなるまい。店頭にあるものを見ても、それが旬のものであるとは、いえなくなっているからである。それ故に旬のものを心得ていることが、美味なものを食べる為の基本となるのである。
 動物性の食品の場合、産卵期直前のものが美味で、卵を産むために、脂肪、蛋白質が、体内に蓄えられ、ホルモンも沢山ある。
 気候からみると、寒さに向かった動物は多分に脂肪を蓄え、運動をしなくなるために、肉が柔らかく、食肉としての条件を満たすことになる。寒ぶな、寒ぼら、寒ぶり、寒しじみなど二月頃までの寒い間は美味なわけである。

 冬眠に入る動物もやはり美味である。スッポンは十一月頃から冬眠に入るが、この時は充分にエサを食べているので、身体に栄養がついていて美味であるが、冬眠の終わり頃では、痩せていて美味ではない。総じて雌の方が美味で、猪などは、特に一度子どもを産んだ雌の肉が美味とされる。水鳥達は雄の方が美味といわれている。
 野菜は京いも、かぶ、金時にんじん、こまつ菜。果実ではきんかん、みかんとなっている。 
如月は着て、更に着重ねると言われるように、暦の上では、節分立春とはいえ、春は名のみで、まだ春色は整わない。そんな寒い時季は暖かい鍋料理に限る。冷えた身体を温めてくれる。湯気のあがる鍋物を囲んで、家族や友人同士が輪になって食事をする。一ト口に鍋物といっても、種類は実に多い。調理によって、大きく分けると、
●チリ鍋 湯またはだし汁で煮る。●寄せ鍋 うす味で煮て、その汁も味わう。
●すき焼き鍋 かなり濃い味。●湯豆腐 豆腐そのものを味わう。
●うどんすき  多種類の具と共にうどんを入れる。

★鍋物とは別に寒い時期に欠かせない汁物にかす汁がある。
 酒粕はなるべく軟らかで湿潤したものが良い。以前甘辛のれん会加盟店の酒蔵を見学した際に、お土産として頂いた酒粕は、見るからに美味しそうで、かす汁にするのが、勿体ないような気がするくらい、きれいな粕であった。さすが灘の酒蔵だと感心したことがあった。以後酒粕を求める時は、製造元を確認するようになったことは、いうまでもない。香りの良いカスを使ったかす汁は、心底から身体が暖まる。
 塩ブリ、塩サケ、塩ニシンなどの魚類、深鍋に水をたっぷりと入れ、昆布を入れ、煮たったら昆布を引揚げ、塩魚を適宜に切って入れ、中火で気長に煮出している間に、、大根の銀杏切り、ニンジンの半月切り、または、小口切り、コンニャクの小口チギリ、刻み油揚げなどを、ダシが充分出たところへ入れて、野菜類が軟らかくなった頃、スリバチでよく当たった粕を入れ、丁寧に溶かしてアマザケくらいの濃度にし、ネギの五分切りを加えて、椀に盛って七色トウガラシ、または、アオノリなど振り込む。                  
 魚のダシと、塩とで、他の調味料は不要。あとは、各家庭のこのみで、味付けをする。好みにもよるが、かす汁は、コトコトと、煮込むほど美味しい。          東 雲 宣 子