花物語 福寿草
幸福と長寿を意味する大変縁起のよい草花とされていて、お正月の寄せ植えによく
使われる。福寿草は日本で付けられた名である。
書物によると、花の時期は二月下旬から四月となっているが、多くの家庭で、正月の
床飾りに用いられている。盆栽の根じめ(気の根元に小さな草花を植えること)として梅と一緒に植えられたりする。
旧暦の元旦に咲くと言うので、ガンジツソウの名もあるが、新暦の元日に咲かせるためには、温室に入れるなどして、工夫がされているのである。
福寿草は、江戸時代から園芸植物として知られ、赤花系・白花系・緑花系・段咲き系に加えて、一重・八重・万重など、40あまりの品種が栽培されている。
1~多数の花が殆ど同時に咲く。咲き終わった茎は一段と伸び、葉も大きくなる。花には黒味がかった5~8のがく片、10数枚の黄金色の花びら、多数の雄しべと50ほどの雌しべがある。
雌しべが熟すと全体が楕円形の果実(集合果という)になる。花が終わって芽ぶきがはじまると、葉は黄ばみ、新緑のころには果実を散らして地上からはすっかり姿を消す。
年末の多忙に追われて、平常心の時はどうということもないのに、些細なことに心が騒ぎ、ゆとりがなくなってしまったとき、ふっと、昨日と微妙に違う福寿草の蕾を見て、心なごむことが、幾度もあった。
毎日、毎日、少しずつ福寿草の蕾が、変化していくのを、見極められるうちは、私の心の優しさも、まだまだ大丈夫だなと、自分自身に安心している昨今である。
明日は蕾が開くだろうか、明後日頃だろうかと、ワクワクして待つ気持ちは、何か良いことがありすうな期待感で心は楽しく踊る。
福寿草の花開く寸前の、柔らかそうな、ふっくらとした蕾が大好きで、見ているうちに、だんだんと愛しさがこみ上げてくる。
毎年暮に福寿草を持ってきてくださる方が、いつもより多く持ってきてくださったので、寄せ植えにせずに少し大きめの鉢に、一種植えにしてみた。蕾が膨らんできて、少しずつ、花が豪華に咲ききるまで、毎日床の間の鉢を楽しく眺めることになるだろう。
●今年も幸せでありますようにと、祈る気持ちが徐々に生まれてくる。
葛 城 陽 子