青葉、若葉に想いを寄せて

siode 日本の四季を色に例えたら、平均的にいえば、春は萌黄・夏は青・秋は紅(くれない)・冬は白になるそうだ。夏には、青嵐(せいらん)という季語があるように、緑の繁茂する様子が、夏を想像させる。
 日本列島は、青葉、若葉の季節へと移ろうていく。日本的な発想から日本料理は、素直に季節を取り入れて、春に萌え出た山菜や野菜の緑は、湯がいてひたしものにする料理が、多くなる。

 夏は皆敷として楓等の緑の葉を料理にあしらい風情を添える。和菓子では、水羊羹や葛餅等を桜の青葉で包み、朴の大葉には、飯を盛る習慣が残っていたりする。
 因みに秋の紅葉は、料理にも菓子にも用いられて、その姿や色を愛でる。冬の雪は、文様にも用いられ、それらを象徴した料理や菓子は、懐紙を手に茶室へと足を向かせる。
                           
 シオデは、関西では、あまり馴染みがないが、信越地方から東北地方の山にかけて、生じるユリ科の山菜である。東北弁で「ショデコ」という。もともと、アイヌ語の「シュオンテ」が訛ったもので、漢字では「牛尾葉」と書く。シオデのつるが伸びた形が、牛の尾にそっくりだからとその名がついた。細長い尾の先にぼそぼそと毛がある。4月から5月頃50㎝ぐらいに伸びた若芽を採ると、ウドとイタドリとに似た好風味で、おひたし、和え物、殊にクルミ和えにすると、季節の山菜の随一といわれている。
 シオデはユリ科で、つるが伸び、巻きひげを出して手近なものにからみつく。新芽はひたし物にするのが抜群で、和え物よりも良いという「通」もいるが、それは個人の好みの問題でもある。
                               
 ネマガリダケが5月~6月にかけてたくさん出回る。中部山岳地方から東北の冷地に群生し、根に近い部分が曲がって、タケノコが斜めになって生え、成長するにつれて上向きになるので、まがったタケノコということから、その名がある。
★では、何故そうなるのか? 
 ネマガリダケの産地は、いずれも雪が深く、冬になると重い雪を被るので、雪の重量に押し倒されて傾斜するのか、或いは、雪の重量に耐える為に、根曲がりの姿勢で、初めから出るのか? いずれにしても雪に対する自衛からであることに相違はない。
                             
 味も風情も細やかであるが、一般のタケノコが出回った後に出てくるので、どうしても新鮮味、話題性にも欠けてしまう。
 雪に耐えただけに、弾力性があり、これで拵えた籠やざるは、丈夫で長持ちするという。
                                   東 雲 宣 子