旬の食べ頃  鯛

taiタイはスズキ目タイ科の魚で、多くは紅色、小魚・甲殻類・貝類などを食べる近海魚で、特に瀬戸内海で多く獲れる。マダイ・チダイ・クロダイ・キダイ等があり、普通はマダイのことを単に「鯛」といっている。
 姿が美しく美味なので、日本料理では魚の王として重用し、「目出度い」に通じることから、古くから祝いの料理に欠かせないものとなっている。
●腐っても鯛   ●鯛の尾となるよりも鰯の頭 ●海老で鯛を釣る ●七福神のエベツサン{戎神}が鯛を釣ってニコニコしておられるのも幸福の象徴である。とにかく鯛はわれわれにとって、身近な、しかも高い憧れとなっているのである。

▲ニラミ鯛
 正月三ガ日、美しく焼いた鯛の姿焼きを。豪華に食卓に備えて置く。年賀の来客に備えて、普通は箸をつけない。ただ横目でにらんでいるだけなので、にらみ鯛といわれている。だから、よそ様へお年賀にお伺いしても、鯛が出されても、決してお箸をつけてはいけないと、母から躾られ、子ども達にもそのように躾てきたが、何時の頃からか、年賀の客も来なくなり、孫たちが、来る正月となり、焼き立ての美味しいうちに、家族で祝おうということで、おせち料理とともに、美味しくいただいている。
▲鯛の骨酒(こつざけ)
 北陸地方で祝い事の時に御馳走になったことがあるが、見事に焼きあげた真鯛の姿焼きを大皿に盛り、日本酒をそそぎ、火をつける、燃え上がる炎に皆の顔が赤く浮き上がって、とても幻想的。始めは驚いたが、豪華な雰囲気に酔いしれ、祝い事にふさわしい演出は、さすがにゴージャスで素晴らしいと感心したことがある。
 炎が納まると、むしり身にして食べ、皿のお酒は飲む。鯛の身と骨の味が酒に移り、程良い塩加減で、お酒というよりも、お酒仕立ての鯛のお吸い物となり美味しい。
▲鯛の潮汁(うしおじる)
 鮮度の良い鯛と、上質の昆布だしで潮汁をつくる。
 大きい鍋にたっぷりの熱湯で、強いめに塩をした、切り分けた鯛の頭や骨もザルごとつてさっと上げる。これは魚の臭みをとるためで、次に冷水で洗う。水洗いすれば、強めの塩もとれる。
 昆布でだし汁をつくり、コトコトとアクをすくいとりながら煮て、塩加減をし、上等のお酒を一人前約大サジ一杯分加える。
 汁を布でこし、再び一緒に鯛を温めて、椀に盛る寸前に醬油を少し加える。
 お茶の席で、潮汁が出たら、骨だけを懐紙に包んで椀に戻す。と教えられていた。「美味しかったです」というおしるしだということである。       東 雲 宣 子