老舗と私  清酒。日本盛株式会社

sake創業128年になる<日本盛>は、親から子へと伝えられる世襲制を慣習とする酒造界にあって、はじめて会社組織の酒造メ-カーとして発足したのが、明治22年。29年に西宮酒造株式会社と改称。順調に販売石高を伸ばし、発展の一途の盛業ぶりであった。昭和20年に戦災に会い、ほとんど焼失したが、再建されて今日に至っている。平成22年に代表作の<日本盛>に因み、<日本盛株式会社>と改称された。
 灘五郷の西宮郷に位置して、宮水井戸地帯(西宮神社のすぐ側)に近接しており、地下のパイプを通じて、宮水を直接工場内に引き入れている。

 
宮水とは、六甲山系の清冽な水が伏流水となり、この辺り一帯の貝殻層を通過することにより、そこから流れ出るカルシウムや、リン酸や、カリ分を多く含み、酒造りの発酵を助ける栄養分が多く、お酒に色を付ける有害成分の鉄分が少なく、天与の霊水といわれている。
 実際に宮水の井戸といわれる現場へ行ってみたが、広い平地に数多くの井戸が整然と縦、横に位置し、酒造各社の名前が決められており、厳粛な粛々とした雰囲気が漂っていた。勿論、厳重に管理されており、関係者以外は立ち入り禁止である。

 酒造りに適したお米<山田錦>は、高度な精白に耐え、驚くほどに光沢を増す大粒心白米で、六甲山脈の北側の谷会いの段丘状水田で、丹念に育成されたものを用いる。
灘の銘酒<日本盛>は、これらの宮水、山田錦、丹波杜氏による優秀な技術集団、醸造に程良い寒気を運ぶ六甲おろし。自然の恵みと、培われた伝承、最新の科学との調和により造られたものである。
昔、いわゆるお酒の「つう」といわれる仲間では、<さかり>といえば、<日本盛>のことで、愛好家が、誇らしげに酒を語り、多いにお酒談議に興じて飲んだものだった。

 酒蔵通りにある煉瓦館を訪ねたのは、もう随分前のことであるが、その時、なんとお洒落な建物だろうと、感じたことが今も鮮明に覚えている。館内は、若い人たちで賑わっていたことに先ず驚いた。一階は、インフォメーションコーナー、レストラン、きき酒コーナー、特選品コーナー等、二階には情報発信コーナー、イベントホール等があり、各種イベント、パーテイー、音楽リサイタルなどあらゆる分野に利用されている。二階に設置されているパソコンで、自分の好みのお酒を打ち出して、一階のきき酒コーナーで、きき酒できるというのも素晴らしいことだと思った。他にも新しいアイデアが、随所に感じた。
私が、20年程前から使っている米ぬか化粧品は、草分け的存在で、今でこそテレビのCMで、いろいろいわれているが、すでに根強い愛好者がいるのである。
                                   梶 康子