季節のもの ほうれん草

ほうれん草アカザ科の一年または二年草。原産地は西部アジア。室町時代にわが国に伝わってきた。初秋に種を蒔いて、10~1月にかけて旬(しゅん)とする。葉は三角状長卵形で先が尖り、根は淡紅色、柔軟甘味に富んでいる。
ゆでて和え物、浸し物、汁の実、鍋物のあしらいとしても使う。


ビタミンA・B・C、それに夏季ものには僅かながらDの他、鉄分、ヨードなどの無機塩類を含んでいる。栄養野菜の宝庫といわれ、野菜の王座を占めている。<ポパイのホーレン草>に象徴されている。その後の研究で、ほうれん草から出るシューサンで、胆石になりやすいとかで、敬遠された時もあった。
以後、学術試験の結果、過剰摂取の為に血尿を出したり、症状が進むと、腎臓や胆嚢に結石が生じる。ほうれん草はアクが強いから、ゆがいたら、暫く水に晒し、流し洗いをすると良い。といわれて、そうすると鉄分やビタミンが減失し、カルシュームも少なくなる。

実際問題として、過剰摂取とはどの程度をさすのか? 毎日、毎食ほうれん草ばかり食べることもないし、一般人の食生活の程度なら害にならないと考えられる。動物性でも植物性でも、タンパク質の多いものをとる場合に併用すると、相互の調和が行われ、やはり従来通りの栄養食品として、大丈夫だろうということになった。
ただ、全国的にほうれん草の生産地に胆石患者発生が、統計的に多かったという事実をふまえて、参考にすることにやぶさかではない。

情報関係の発達で、何事によらず、一時は大騒ぎをするが、後は何事もなかったかのように平常に戻る。

ゆがき方は、ゆでる前にしばらく水に漬けておくと、切花などの水揚げ同様に、生気を復活させて、味も良くなる。
熱湯に食塩を入れ、煮たったらきれいに洗ったほうれん草を入れる。フタはしない。ザットふき上がったら、冷水にとって2,3回水替えをする。
ゆがいたほうれん草の株を揃えて固くしぼり、適当に切って、<お浸し>や<和え物>にする。花ガツオや炒りゴマをあしらうと風味をます。

私事で恐縮ですが、月に一度診察していただいている掛かり付けの医師は、いつも私の顔を見ると「ほうれん草と納豆を食べていますか?」と聞かれる。やはり大事な栄養源なのである。
                   東 雲 宣 子