惷の味  七草がゆ

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七草がゆの風習は、もう、すたれたのかなと、ある時期に思ったこともありましたが、
百貨店やスーパー等で<七草セット>で売り出すようになって、結構若いお母さん達も七草がゆを作っているようです。
業者の商魂に乗せられているようですが、古来の伝統行事が、
受け継がれているのは嬉しいことです。

中国の「荊楚(けいそ)歳時記」は六世紀の頃の湖南と湖北地方の年中行事、人事、自然をまとめたもので「正月七日を人日(じんじつ)となす。七種の菜を以って羹(あつもの)をつくる」とある。人日とは、正月上の子の日に、郊外の山野に出て、小松を引き遊ぶ「子の日の遊び」の行事があり、その時若菜を摘んで羹に調理し供した習いも古く、光孝天皇は料理や若菜摘みを好まれ、小倉百人一首に
<君がため春の野に出でて若菜摘む わが衣手に雪はふりつつ>の歌を残されたが、その後継の宇多天皇(889~898)が父の天皇を偲び、中国の風習を取り入れられたのが、日本の七種行事の始まりと言われています。後に五節句の一つになり、清少納言の「枕草子」にも書かれています。
 ●セリ ●ナズナ<ペンペン草> ●オギョウ<ゴギョウ・ハハコ草> ●ハコベラ ●ホトケノザ<コオニタビラコ> ●スズナ<カブ> ●スズシロ<大根>が正式の七種で、これを俎板の上に並べ、「七草なずな唐土(とうど)の鳥が日本の土地に渡らぬ先に七種祝う。」とはやしたてながら、その年の恵方に向かって包丁で若菜をたたき刻み、七草がゆで万病を防ぎ、七種たたきで、害鳥を追う行事。これは、大陸から毒鳥が渡来して本土に疫病を蔓延させるから、渡り鳥が来る前に打ち払うのだということです。
 七種の種類や、七種たたきのはやしは、地方によってまちまちで、七種といっても雪深い地方では数も限られます。ニンジン、ゴボウ、クリ、セリ、タラの芽,大根、くしがきを七種とするのが東北地方の一部にあるそうです。京都では周辺の野から若菜を集めました。昔「七野の七草」と称して、
◎大原のセリ ◎内野のナズナ ◎平野のゴギョウ ◎嵯峨野のホトケノザ ◎紫野のスズナ ◎北野のスズシロ。これらを選んで宮中へ納める習いでありましたが、民間では後にナズナが七草を代表して青菜と共に用いられることが多くなりました。

 有色野菜が少ない冬に、若菜を探して、ビタミンや栄養を補給しようとした昔の人の生活の知恵でもあるわけです。年中、緑黄色野菜に恵まれていながら、野菜離れのも多い昨今、食生活を考え直す日にしてはいかがでしょうか。
華 岡 弥 生