老舗と私 菊正宗酒造株式会社

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万治2年(1659)摂津国御影郷<神戸市東灘区御影>にて創業。現在に至る357年に及ぶ間、たゆまざる研究で常にその時代、時代を先取りし、日本酒のトップ・ブランドとしてあり続けている。

天保11年(1840)には、西宮市に酒造りに好適な<宮水>が発見されて、さらに、文化年間に優れた杜氏を輩出させている、丹波地方の技術者が蔵に入り、現在に伝えられる優れた技術を生み出した。こうした技術革新を積み重ねて、菊正宗は業界のトップを守り続けている。

●昭和49年に「四季醸造蔵<菊栄工場>」を完成させ、菊正宗を一年中供給出来る。
●昭和50年に「辛口宣言」を行い、日本酒の主流だった甘口傾向を一変させた。そして、今日の辛口ブームの口火を切ることになった。
●昭和63年には、主力商品の全てを本醸造化し、本物の味を消費者へ提供していくことを使命としている。

菊正宗が社会の大勢や変革に押し流されることなく、本流の味を一筋に守り抜くことで、より良いものを社会に提供していくことが出来ると確信している。

 何度か工場見学をさせてもらったが、最初の見学が、強列に印象に残っている。
最新の設備を誇る整備された<蔵>は「伝統日々新」。重厚な伝統と、たゆまざる最新の磨き抜かれた技術の結晶が、凝結されたこの<蔵>からあの<菊正宗>が生産されているのだ。後で、いただいた、搾りたての<菊正宗>の美味しかったのはいうまでもない。

続いて案内された資料館では、昔からの酒造りの道具類等が展示されている。手造りの道具は、その殆どが木製品で、年輪がくっきりと浮き出ていて、先端は使いこまれていて、擦り減っている。昔の人は、これほど丁寧に、大切に<もの>を扱っておられたのだと、感じ入る。

時代の最先端をゆく最新の工場と、昔の酒造りの人々の思いのこもった資料館。酒文化の連綿とした変遷と歴史を感じて、今、この美味しいお酒を飲めることが出来るのである。

海外においても、アメリカをはじめ、アジア、ヨーロッパ、等に対して、マーケテイング活動を実施し、順調に実績を伸ばしている。海外の日本酒ブームの、先駆けとなった<菊正宗>の功績は大きく、更なる活躍が期待されている。
梶 康子