老舗物語 ― 小倉屋株式会社 をぐら昆布
創業嘉永元年。160年を経て<のれん>を守り続け、今日に至っている老舗である。
汐冨貴昆布をはじめ、数ある馴染みの商品の中から、今回は(匠の技)による極上手がきおぼろ昆布・とろろ昆布をご紹介。
大阪戎橋筋 をぐら屋の職人三田智則74才は、おぼろ昆布の手漉き<てすき>加工一筋にこだわり続け、こつこつとたゆまず続けた努力の結晶が、究極の手製白おぼろ昆布、手製白とろろ昆布、手製黒とろろ昆布である。これらの技により栄誉ある賞を受けている。
○堺市ものづくりマイスターの称号
授与 堺市市長 平成14年4月26日
○大阪府技能顕功章
表彰 大阪府知事 平成15年11月7日
○卓越技能賞
授与 厚生労働大臣 平成16年11月25日
○黄綬褒章
表彰 内閣総理大臣 平成18年5月17日
黄綬褒章に至っては昆布職人の受賞は日本全国で唯一人という名誉なことである。
原料には北海道道南尾札部浜産の天然真昆布を使用。味良く、旨みも強く、癖がないのが特徴で、昆布加工にもっとも適している為「昆布の王様」ともいわれている。その尾札部昆布の中でも最上の1等品を使い、さらに肉厚で傷がなく、形の揃ったものだけを使用している。
乾燥した昆布を酢につけ、ころあいを見て適度に乾燥した昆布の表面の黒いところを取って更に2ヶ月熟成させ酢の味をとばす。2ヶ月も経つとしまってかきにくいので、普通の職人は嫌がるが、自分の技を貫く為に徹底してこだわる。74歳の身体で取り組む為に毎日腕立て伏せを200回して筋肉を鍛えているという。
特徴的な手法は、昆布を削る刃物にある。包丁の刃先を撫でるようにすることをアキタと呼ばれる。このアキタのこつで昆布の厚みも決まる。目に見えない程度の角度で刃先を内側に曲げておく。そして微妙な力加減によって昆布の表面を削る。そうすることによって、機械では作り得ない極上のおぼろ・とろろ昆布が出来あがる。
丹念こめて仕上がった昆布は降りたての淡雪を想像させ、ふんわりと溶けるほどに薄く、熟成させた真昆布から出る旨みを最大限に引き出して甘みと香りが口いっぱいにひろがる。
手がきだから一日に約800gしかできないという。採算を度外視した芸術品ともいえよう。