伝統の味覚 ― うなぎ

photo06.jpg<石麻呂にわれ物申す「夏痩せに よしといふものぞ むなぎ(うなぎ)取り召せ」> 

「萬葉集」に大伴家持が友人に送った歌として有名であるが、20年程前に《いづもや》のご当主に教えていただいた。もうその頃遠く奈良朝時代からうなぎに滋養分の豊富なことが知られていたのである。

 ウナギは四季を通じて美味であるが、言いかえれば、ウナギはいつでも旬であるといえないこともない。そろそろ夏バテを意識する頃に脂肪とビタミンAの多いウナギは、土用の頃に旬といえるのかも知れない。

 関西ではウナギを腹開きにして、焼き、頭は着けたまま、本焼きの後で切り落とし、その頭を半助とよんで売っている。そのような話を聞いたことはあるが、数年前にウナギやさんの店頭で、ウナギの頭ばかりを見かけて驚いたことがある。

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 ウナギの尾は力が強く肉づきもよいので、カバ焼きを食べるなら下半身がよいとされている。関東ではウナギを背開きにして白焼きにする。どちらにせよウナギの生命はタレで、誇りあるウナギ店は自店のタレを大切に守って次代へ引き継いでいく。

 当甘辛のれん会加盟店の大阪・東心斎橋の<いづもや>は関西風の名門で、ミナミ・宗右衛門町の<菱富>は、関西にあって、関東風のウナギの「のれん」を守り続けている。