のれん花物語 ― 蓮

photo07.jpg

 わたしは「蓮」の花です。スイレン科ハス属。

涼しげな葉と、豊かに開く花の心安らぐ美しさは「極楽の七宝池に咲く花」として仏教思想の象徴の花とされています。

 わたしの主人は、お盆の仏花に毎年ハスの花入りをお供えしているが、蕾が開いて花が咲いたことがないのです。普段よりは高価であるにもかかわらず花が開かないので、わたしの主人は2,3の友人に問い合わせてみたが「そう言われてみると蕾のままですね」とあまり気にしていない様子。
 私の主人は、意地になって、切り口を焼いたり、ちょっとたたいてみたり毎年挑戦してみましたが見事に失敗。とうとう数年前に当欄にそのことを書きましたら、親切な方から水揚げポンプが送られてきました。わたしの主人の感激は申すまでもなく、翌年のお盆を手ぐすねひいて待ちかねて、早速水揚げポンプで切り口から水を注入して毎日毎日楽しみに水を替えたりしていましたが、遂に花は開きませんでした。

illust08.jpg
 翌年、花やさんへ行って「どうしたら花が咲くのですか?」と聞けば、花やさん曰く「これは咲きませんよ」あまりにもあっさりというものですから、あ然として暫くは口もきけず、そして、呟きました。「そんな花なら売らなければよいのに。しかも高いじゃない」。

 そんな事があったにもめげずわたしの主人は、開いた花を買ったり、お友達にいただいたりしながら、お供えをしています。時期的に開いた花が手に入らないこともあり

梶 康子