蒲 鉾

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 蒲鉾というと、先ずお正月のおせち料理の重箱の紅白のお目出度い食品が思い起こされる。

 

 当甘辛のれん会加盟店の<大寅>は、いまでこそ各有名百貨店に置いて売られているが、数十年前は戎橋筋の本店か、梅田の阪神甘辛のれん街へわざわざ出かけたものだ。お正月の蒲鉾は、大寅の蒲鉾と決めている母の強いこだわりがあって、私は使いに行かされた。時間をかけて黒山の様な人だかりをかきわけてやっと買い終えて外へ出ると、汗でほてった顔に冷たい風が心地よかったのをおぼえている。

 蒲鉾は日本列島各地に特有のものが生産され、その地の名産となって親しまれている。旅行したら必ず土産品店に並べられているのも頷ける。品定めに迷ったら蒲鉾にするという友人がいるが、私も悩んだ末に蒲鉾にしている時もある。

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 蒲鉾は最初に作られた頃は、今の焼きちくわのようなものだった・漢字で蒲鉾と書くのは棒の先に魚のすりみを握りつけ、蒸したり焼いたりしていた。それが、蒲の穂先に似ているので蒲鉾と呼ばれるようになった。

 室町中期(1450年頃)の書物に蒲鉾の字がみえるので、この頃すでに食べられていた。今の形の蒲鉾になったのは桃山時代からで、もともとのかまぼこは竹輪とよばれるようになった。
 原料も時代と共に変って、ナマズからハモが加わり、江戸時代になると、タイやヒラメも使われ、技術も進歩しそれぞれの地域の特色モあいまって益々多様化した。
 お正月用に松、鶴の絵や寿の字を入れたり、お祝儀膳にのぼっている。

梶 康子