2021年秋・冬号
のれんメール
●黒雲にくわつと日のさす紅葉かな 木 導(十 月)
●宇治橋の神や茶の花さくや姫 宗 因(十一月)
●かくれ家や村一番の冬日向 一 茶(十二月)
新歳時記より
旬のものを食べて、抵抗力を身につけよう。
●十月 うなぎ・下り鮎(名残の鮎を「さびあゆ」とも呼ぶ)・しじみ(寒さに向かうにつれて美味しくなる)・大根・蓮根・栗・柿・椎茸・くるみ。
●十一月 秋刀魚・鯖・鮭・かじき・牡蠣・すっぽん・牛肉・葱(ネギ)・大根・ミカン。
●十二月 新巻き鮭・鮪・鱈・かれいひらめ・海鼠(ナマコ)「冬至ナマコ」・鮟鱇(あんこう)・白菜・干し柿・柚子・大根。
★大根 秋が深まるにつれて、益々旨味がのる野菜の代表に大根がある。
大根には、スズシロ、オホネ、カガミグサなど古い呼び名があり、御所言葉では、カラモノとも言う。カラモノと言うのは、やはり唐から渡来したことを意味する。
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●祝儀の三種肴
いよいよ歳晩。料理屋、デパート、スーパー、コンビニ、等が競っておせち料理の予約合戦が始まっている。三種肴とは、数の子、田作りのゴマメ、黒豆のことである。
★数の子
ニシンの子で、ニシンの胎卵を乾燥し、または塩漬けにしたもので、数の子は子孫繁栄の縁起として新年の献立になくてはならぬものとされた。蛋白質に富んだ栄養食品である。
北海道が主産地で漁獲後約四日くらいを経たニシンから卵巣をとり、海水を浸した桶に約一昼夜くらい浸し、崩さぬように掬いあげて、ひろげ、海水をそそいで、きれいに洗いあげ、水切りしてから、塩漬けにし、またはムシロにひろげて、乾燥させる。乾燥するものは、約一週間後にザルでふるい、フヨリと名づけるものと分離精製する。
乾燥、塩漬けとも米糠をいれた水に漬けてもどすと、渋味がぬけて早く食用出来る。
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●老舗と私 御菓子司 鶴屋八幡<和菓子>
江戸時代の元禄のころ、大阪高麗橋に店を構えていた有名和菓子の老舗の「虎屋大和藤原伊織」に由来する。<摂津名所図会><東海道中膝栗毛>など数々の文献に残る程隆盛をきわめていた「虎屋伊織」が閉店の後、永年奉公をしていた今中伊八(鶴屋八幡初代)が、主家と贔屓筋から開業を勧められ、「虎屋伊織」の灯を消すまいと、文久3年職人たちと共に、同じく高麗橋に暖簾を掲げた。
鶴屋八幡の屋号は、初代の自宅庭に鶴が巣を作った瑞祥と、開業に際し「虎屋伊織」に原材料を納めていた「八幡屋」に支援を受けた恩を忘れまいとして「鶴屋八幡」と名付けた。初代の恩義を大切にする真骨頂の精神が込められているのである。
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●老舗と私 御昆布司 小倉屋山本<昆布>
大阪新町橋ほとりに、初代山本利助が<小倉屋山本>の「のれん」をかかげたのが、嘉永元年(1848)今日まで常に原藻の精選と独自の加工法に心を砕き、何物にも替えがたい伝統によって、時代のニーズに敏感で、時流にそって、新しい味を各種の逸品としてうみだしている。
▲宮内庁御用達 ▲天覧・台覧 ▲農林大臣賞 ▲日本農林漁業振興会会長賞等、再々の受賞に輝いている。
★ 大阪の代表的名産は先ず塩昆布。なかでも創業以来約173年の老舗<小倉屋山本>は、昔ながらの塩昆布をつくり続け、品質の優秀さは定評がある。中でも「えびすめ」は、人をして、美味しすぎると言わしめた程の美味しさである。
昆布はアイヌ語で、海藻のこと。北海道道南の最高級の昆布を選りすぐって煮込み、副材料も吟味し、古くから伝わった方法で仕上げた塩昆布は、まさに逸品である。
表面についている粉も、すっかり馴染みになって、格調の高い風格は、昆布の中の昆布とまでいわれている。いわば昆布の王様とでもいうところだろう。
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