●すし萬 雀鮨

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 承応二年(1653)浪速・大阪七郎左衛門町にて、初代萬助が魚屋を開業した。副業に江鮒の雀鮨を商っていた。
 天明二年(1781)京都の禁裏へ献じることになり、八代萬助が小鯛雀鮨を調進し、好評を得たので、雀鮨の専門店となり、以来、御用御鮨師を世襲している。

★すしの生命はお米。
 <飯に六分の味>といわれるくらいで、最高級の米を仕入れている。<すし萬>独特の、まろやかな、ハリのあるすしご飯は、他のすしには見られない。類似品も出てこない卓越した、<すしご飯>は、他者に真似しようのない、創意と工夫がなされているからである。
 実際に、初めて口にした時、私も例えようもないくらいに美味しかったのを、今も鮮明に覚えている。
★雀鮨の材料。
 明石鯛の一本釣り。二歳ものを、吟味された醸造酢、全体を包んでいる昆布は北海道尻岸内産、昔ながらの伝統が、今日の美味に受け継がれているのである。
★製法
<すし萬>の製法の理念は、常に味の創造にある。秘伝・家伝に、その時代の味を先取りし、絶えず新しい味づくりに挑戦し、今日の食文化を支えてきた。
 伝統だけに頼らない、<老舗>のひたむきな使命と誇りを持ち続けている。
★<すし萬>のおすしの抜群の美味しさは、「すしネタ」にあると言いきる人もあるくらいで、そのすしネタをベースに、新鮮な選ばれた材料を使った、種々のおすしは、むしろ美味しいのが当然のことである。

★桃山すし 車海老と白身の押しすし。  
★特製柳すし 鯖の押し寿司で<松前寿司>
★阿奈古 巻(穴子寿司) ちょっと贅沢な煮込み穴子と厚焼きたまごを中具(タネ)にした海苔巻き。
★阿奈古 (穴子)すし 焼穴子とは違った、見るよりは、味覚本位の煮込み穴子の押し寿司。
★元祖イソ巻   海苔巻きのイメージを変えた海苔巻き。
★特製うの丸   うなぎとキュウリの海苔巻き。
★本ちらし鮨   伝承された、最高級の本格的ちらし寿司。
★吹き寄せ    浪花風のちらし寿司。
★上方茶巾すし  お茶事、点心向きで、人気を集めている。

 私がはじめて<すし萬>の雀鮨を食したのは、随分以前のことであった。会社に勤務していた頃、東京の本社から重役たちが、出張してくると、必ずお土産に<すし萬>の雀鮨と決まっていた。それを買うために女子社員が、当時は筋違橋にあった、<すし萬>の本店まで行ったものである。
 その時は、どうして<すし萬>までわざわざ行かなければならないのか? 納得できなかったので、上司に聞いてみた。「東京にはない大阪の味だから」との返事がかえってきた。
 ある日、得意先から「皆さまにてお召し上がりください」と戴いたのが<すし萬>の雀鮨であった。上司が「いつも買いにいってくれているのが、どんなお寿司か、味見しますか?女子社員で食べてください」との言葉に、一同大喜びで戴いた。
 その旨さ・感動は、「おすしの芸術品だわ。こんなに美味しいおすしは、始めて食べた」老舗の重みがドッシリと沁み込んだ、長年の間に培われた伝等・品格・重量感とでも表現すれば良いのだろうか? いまでもしっかり覚えている。たまたま出かけた時に、求めるが、あの時に味わった旨さは、今も昔も変わらない。           
                                      梶 康子