●老舗紹介 ★菊正宗酒造株式会社 <清酒>
万治二年(1659)摂津国兎原郡御影郷(現在の神戸市東灘区御影)において創業。現在に至る364年に及ぶまで、たゆまざる研究と努力で、 それぞれの時代を先取りし、日本酒のトップメーカーとして、ブランドを守り続け、常に業界をリードし現在に至る。
年末年始の忘年会、グループの会合、女子会、年賀のお祝い等、楽し
い集まりのお供には、信頼と安心の定評の<菊正宗>を是非ご用命を
灘五郷が酒造りの主産地として発展した理由の一つに、六甲山麓の傾斜を利用した水車精米にあるといわれている。明治中期には、水車数270ケ所、臼の数24,700を数えたが、明治の終わりから大正にかけて、動力精米機が発達し、水車小屋も次第に姿を消していった。その一つが、敷地内に保存されている。
今、一つの大きな理由として、天保11年(1840)に<宮水>が発見されたことにある。西宮神社の東南の一地区に湧き出る地下水は、鉄分が少なく、カルシューム・カリ・リンを多量に含む硬水で、酒づくりに最も適した水として「宮水」と呼ばれている。宮水は各酒造会社が各自の井戸を保有している。
菊正宗は500m四方一角に23の井戸を持ち、厳重に管理されている。以前、取材のために特別に案内されて、現場を見学させていただいたが、整然と井戸が並んでいて、完全に管理されている様子に厳粛な感動をしたことを思い出す。
昔は、時計がなかったので、ときを知るのに、酒造り歌を歌ったりして、時間の経過をおしはかった。微妙な呼吸、音頭の緩急により、杜氏が判断をするのである。杜氏は絶えず懐手(ふところで)をして、手の体温を一定にして計器の役割りをし、また、「ひねりもち」をこしらえて、のび具合をみたりして、蒸し加減を判断したり、酒造りの全責任は、杜氏にあったのである。<菊正宗>の清酒は優秀な杜氏達によって、受け継がれてきたのである。優れた杜氏を輩出させている丹波地方の技術者が蔵に入り、現在に伝えられる優れた技術を生み出し、技術革新を重ねたからこそ、現在の業界トップの<菊正宗>がある。
<菊正宗>の誇る「四季蔵」は鉄筋コンクリート窓なしの建物に最新式空調により、常に最高の醸造環境が保たれ、室内定温低湿無菌状態で、醸造機械は各部内を立体的にレイアウトし、特に製麹、圧搾は自動制御方式、製造工程を監視するコントロール室。合理化された近代化の波を、目のあたりに見る思いだ。
時代の先端をゆく近代工場と、使われている自然の<宮水>は、神秘的な悠久のコントラストのように想える。
梶 康子