◎老舗と私

3683826_m●サントリーホールデイングス株式会社
 新入社員の歓迎会で、初めて宴会なるものに出席しその後、女子社員たちと、共に、二次回に誘われ、楽しい時を過ごし、大人になったのだと自覚した時の感激は、今でもしっかり覚えている。
 私的には其の時から、サントリーとのお付き合いが始まったのである。初めて飲んだウイスキーの味わいは、はっきり言って解らなくって「これが大人の味なのだなー」と納得し、一口で酔った気分になっていた。
 結婚後は、夫は、ムード派で、高価なグラスをわざわざ購入し、或いは高級なウイスキーであったり、ビールであったり、チューハイの時もありで、日頃は家業の仕事に追われて、ゆっくり話せないのを取り戻すように、話題も豊富で、秋の夜長を楽しんでいた。

                        
 ご縁があって、「甘辛のれん会」の<のれん>誌の編集に関わらせていただくようになり、取材にお伺いさせていただいても、担当者の方は、いつも丁寧にお話ししてくださり、緊張も解けて、存分に質問もさせていただけた。
 取材を終えた後は、気分が軽くなったせいもあるのだろうが、勤めていた会社の近くでもあって、昔の青春時代を思い出し、初めて飲んだウイスキーの味がほのかに甦って、胸がキュンとなってきて、苦笑したものである。
                                        
 夫亡き今は、虫の音に魅かれて、一人グラスを傾けて、たまに、静かに音楽を聴きながら、チューハイを飲んでいる。チュ-ハイが身体に良いと言われているからだが、好きなように自分でブレンドできるから、其の日の気分で好みにブレンドするのも楽しい。 、
                               
 折に触れて同居の息子が、グラスと<ザ・プレミアム・モルツ>を持って、私の部屋にやってきて、最近の話題や想い出話しをしにやって来る。ウクライナ問題から、戦争の話になり、第二次世界大戦にまでさかのぼる。その話になると、空襲、疎開、終戦、戦後の話は尽きることなく、気がつけば、<ザ・プレミアム・モルツ>の空き缶が並んでいることになる。
 彼は<ザ・プレミアム・モルツ>にはまり込んで、週末のひと時を楽しんでいる。華やかな<香り>と深い<コク>が魅力で、後味が心地良く、余韻が優しく包み込んでくれる。サントリーの宣伝文句そのままだと言う。私は話しているうちに、「だんだんお父さんに似てきました」と思ったりもする。
 孫(息子の娘)も成人してからは、職場での楽しいことや、悩みを語り、結構良好な親子の関係をきづいているようだ。有難い潤滑油になってくれている。
                                       梶 康子