●祝儀の三種肴
いよいよ歳晩。料理屋、デパート、スーパー、コンビニ、等が競っておせち料理の予約合戦が始まっている。三種肴とは、数の子、田作りのゴマメ、黒豆のことである。
★数の子
ニシンの子で、ニシンの胎卵を乾燥し、または塩漬けにしたもので、数の子は子孫繁栄の縁起として新年の献立になくてはならぬものとされた。蛋白質に富んだ栄養食品である。
北海道が主産地で漁獲後約四日くらいを経たニシンから卵巣をとり、海水を浸した桶に約一昼夜くらい浸し、崩さぬように掬いあげて、ひろげ、海水をそそいで、きれいに洗いあげ、水切りしてから、塩漬けにし、またはムシロにひろげて、乾燥させる。乾燥するものは、約一週間後にザルでふるい、フヨリと名づけるものと分離精製する。
乾燥、塩漬けとも米糠をいれた水に漬けてもどすと、渋味がぬけて早く食用出来る。
★田作りのゴマメ
カタクチイワシの稚魚を干したもので「五万米」とも書き、昔は稲の肥料にしたとか、田植えの祝肴にしたとかという。田を作るとの縁語から豊作を祈念し、正月の献立になくてはならぬものとなった。
昔、京都の御所が窮乏された時、儀式の際に頭付き一尾と献立にあっても、調達出来なかったので、尾頭付きで安値のゴマメを使用したことから、目出度い儀式に用いられるようになった。
★黒マメ
マメで達者で健康を願う意味がある。色・ツヤ美しく煮含めるのが、主婦の腕のみせどころで、少し硬めだったり、煮過ぎて、シワがよったり、形が崩れたり、理想的に、仕上がるまでには、相当の経験を要する。
▲このほかに、関西では棒ダラもある。タラは、「鱈」と書く。文字通り、雪の冬期が最も美味で、生鮮のものは勿論、塩物、乾燥品としても用途が広く、お正月の重要食品魚とされている。
タラは活力のある魚で、死に臨んでも高音を聞かせるか、何らかの刺激を与えると、更生の気を示すといわれ、昔から武家に珍重され、町家でも由緒のある筋では、わざわざ北海道まで行って、正月用に求めたという。
▲おせち料理の材料の全てにも意味があって
◎鯛=めでたい。
◎昆布=よろこ(ん)ぶ。
◎海老=腰の曲がるまでの長寿を願う。
◎れんこん=先見の明を願う。
◎かちくり=勝ちに通じる。
◎ごぼう=家の基礎がごぼうのように、地中深く安定するように。
◎ぶり=呼び名が幾度か変わるから、出世魚と呼ばれているので、出世するように。
◎里芋=子芋が沢山できるので、子どもが沢山産まれるように。
◎ゆずり葉=若葉が生えてこないうちは、古い葉が頑張っているので、世代交代が順序よく行われるように。
◎あわび=縄文時代から日本人の食糧とされていて、あわびの肉を薄く剥いで、伸ばした あわびは、長く伸びるところから、永続し発展する意味でめでたいとされていた。
◎雑煮=大阪の商家では、何でも丸く円満にということで、大根・人参・を小さく輪切りにし、小さな子芋の皮を剝いたままの、丸いのを使い、お餅も丸餅、それも四個は、死に通じるということで、三個か五個にする。味は白味噌仕立てである。
何かと縁起に結び付くもので、受け継がれてきたが、最近は、家庭でつくることが、少なくなってきて、出来あいの品を求めることが多くなってきている。時代の流れというものだろうか。
葛 城 陽 子