●健康な食生活に海藻を。
●海藻の四季
海に近い所に住む民族は古くから海藻を食べてきた。ヨーロッパの北方でも食べられているが、我々日本人も古代から食べてきた。そしてその食べる量は最も多いとされている。
海藻が食べ物として、栄養価の高い価値のあるものだと認められたのは、そんなに古いことではないが、日本人の海藻好きは、日本人の健康に大きく貢献しているだろうとみられている。
★アオノリは、美しい色をしていて、自然天然に生えているのを摘んできて、日光に干し乾かして保存したもので、乾物として市販されている。
山の芋をすりおろして、とろろをつくった上に、アオノリを火であぶって手でもんで粉にして、ふりかける。磯の香もしてなかなか風情もある。テンプラの衣につけて、緑揚げにしたり、お好み焼にも使われる。
★春の海藻としては、モズクがある。ホンダワラの一種で、朝食の膳に酢のものにすると、食が進む。モズクは雑炊にすると、とても美味しい。煮出し汁を引いて雑炊をつくり、モズクを入れたもので、いろいろの雑炊の中での、逸品とされている。
★ヒジキは漢字で鹿尾菜と書く。この海藻も春のものだが、本当に美味しいのは、九月、十月で、春に採って干し乾かす。
江戸時代には、ヒジキを日光に干し乾かし、つきくだいて米粒ほどにし、米・麦に混ぜて主食としていた。
★ワカメは、漢字で和布とか若布とか書かれる。その布というのは、海の中で布のようにひらひらしているからということらしい。
ワカメの旬は、山口県では二月から五月。熊本県では二月から四月。秋田県では十二月から二月。岩手県では四月から六月。和歌山県では十二月から四月というように明治の初めの文献に記してある。これらの地へ旅行したら、お土産物店には、ワカメが置いてある。
ワカメは浅い海では、塩の引いた時に刃物で刈り取る。深い海では海女が潜って採り、少し深い所では小舟で採る。
★夏の食生活に馴染み深い寒天は、海藻テングサからつくられる。テングサは、イギス、エゴノリ、トサカノリ、ムカデノリなどの紅藻類がテングサ属とされている。テングサとはトコロテンの材料となる海藻と言う意味である。
寒天は江戸時代に京都の伏見で工夫されたもので、伏見の近くの黄檗山万福寺の隠元禅師が名づけ親だとされている。この寒天が菓子の羊羹に使われるようになって、練羊羹が盛んに作られるようになった。
★昆布の成分は、およそ50%が炭水化物で、そのうちの20%は繊維、残りはアルギン酸とよばれるもので、此の他に糖類としてマンニットを含んでいて、このマンニットは昆布の表面に白い粉のようになって現れる。
昆布の旨味は、化学調味料を作りだすヒントを与えたことは良く知られているが、この味のもとはグルタミン酸ソーダ塩である。20度Cの水の中に30分から60分間昆布を浸しておくと、臭くない煮出し汁ができるが、これはグルタミン酸ソーダが水に溶けて出てきたからである。昆布の煮出し汁には、昆布のヨードやカルシウム、ミネラルなどが、溶けていて、栄養的に価値が高い。昆布は我々の食生活の必需品となっている。
当甘辛のれん会に加盟の老舗、をぐら昆布・小倉屋山本・松前屋(順不動)は永年の伝統と技術により、信用と信頼を確固たるものとし、大阪名物として存在している。
★海苔は関東で発達し好まれていたが、戦後に関西にも広がり愛好されている。海苔の蛋白質は良質で、ビタミンAとCが豊富なのだが、消化されて利用率はAが20%以下だともみられている。つまり栄養食品よりも嗜好食品で、朝食に海苔の香りを楽しむのも良い。
葛 城 陽 子