●旬の食文化
▲蕎麦(そば)
一年の最後の日、みそか蕎麦を食べる習慣があるが、江戸時代から始まったらしい。
★これは、寿命を延ばし、家運を富ませ、家財を長く保って幸福を願う意味を持っている。蕎麦のように、細く永く続きますようにとの願いが込められているのである。
★団子を作り、転がして水に入れると、下に沈んで金銀を集めやすいので、来年こそは、金に縁があるようにとの切なる願いもある。
★蕎麦はなよなよしていて、風に倒されてもそぐに立ち上がるので、<七転び八起>来年こそはの祈りを込めてという意味もある。
★引き越し蕎麦も「お傍に細く長く」の、御付き合いをお願いしますということから、ご近所に配られたが、近頃は、ほのぼのとした、そういう風習も影をひそめ、恐らく若い世代は、知っている者も少なくなり、知っていてもしない人もあったりする。
尤も、最近は蕎麦でなくって、他のものに代用されるようになってきているので、引き越し蕎麦の意味が、根本的に変わってきているからかも知れない。
☆蕎麦は含水炭素が多く、ビタミンが豊富で大変栄養価の高い食品で、頭の栄養として大事なグルプリンという蛋白質が12~15%も含まれている。また植物性食品に珍しくトリプトファンが含まれている。これは必須アミノ酸のなかのリジンと共に、最も大事なもので、その為にアミノ酸組織がよくなり、蛋白値は74、ビタミンB1、ルチンも多く、動脈硬化の予防にもなるといわれている。
☆美容と健康に良いと言われ出して久しいけれど、頭の栄養にも良いとあれば、益々蕎麦は我々の身近なものになっていくことだろう。
☆蕎麦は実ばかりでなく、花の咲く前の若い茎葉をゆでて浸し物・和え物にすると、ホーレン草に劣らぬ風味があり、汁の実にもなる。
☆蕎麦は耐寒性に富み土壌も選ばず、むしろ、肥えた優良よりも痩地に産したほうが、香・味共に勝るというぐらいだから、これほど都合の良い農産物はない。
☆蕎麦は消化が良いということで、常食する人もいるらしいが、何事もほどほどに。
☆蕎麦は夏でも冬でも栽培出来るから、古来、米の出来具合を見てからでも、急の間に合うと言う便利な食材だった。飢饉を救ってきた貴重な食品でもある。
◎甘辛のれん会の会員の「美々卯」蕎麦は、毎年大晦日には戦場の如き賑わいをみせるが、今年は、新型ウイルスコロナ対策に万全を期している。ご用命の程を。 梶 康子