海藻の四季 ①
海に近い所に住む人々は古くから海藻を食べてきた。海藻が、健康に大きく貢献していると認められたのは、そんなに古いことではないが、日本人は比較的海藻が好きで、古代より食べてきたとされ、おそらく食べる量は世界でも多い方と言われている。
★初春の目出度さを海苔雑煮で、お祝いするのが、山陰松江地方の人々の習わしで、正月二日はすまし雑煮になま海苔をたっぷりと入れたのを、食べると聞いたこともある。今もその習慣は、残されているのだろうか?
★アオノリは美しい色をしていて、自然天然に生えているのを摘んできて、日光に干し乾かして保存したもので、乾物とする。山の芋をすりおろしてとろろを作った上に、アオノリを火であぶって、手でもんで粉にしてふりかける。磯の香がしてなかなか風情がある。
★春の海藻としてはモズクがある。ホンダワラの一種で、海辺で宿をとると朝食の膳に、とれたてのモズクの酢のものを出してくれる時もある。モズクは雑炊にすると、とても美味いしい。煮だし汁をひいて雑炊にして、モズクを入れたもので、逸品といわれている。
★ヒジキは漢字で鹿尾菜と書く。本当に美味しいのは九月、十月でその頃は採りにくいので春に採って干し乾かす。京都・大阪の商家では安価で栄養価も高いのでよく食べた。
★ワカメは、漢字で和布、若布と書く。海の中で布のようにひらひらしているから其の名がついたという。ワカメの旬は、明治のはじめの文献によると、山口県では二月から五月、熊本県では二月から四月、和歌山県では十二月から二月、新潟県では十二月から四月、というように記されている。
ワカメは、浅い海では、潮の引いた時に刃物で刈り取る。少し深い所では小舟で採り、深い海では海女さんが潜って採る。採ってきたのを、伸ばして、紙のようにのばして、干して乾かしたのを板ワカメといい、山陰地方の名物となっており、また能登地方でも、ノシワカメと言ってこれも名物となった。また志摩地方のイトワカメも名物となった。
★夏の食生活に馴染み深い寒天は、海藻テングサから作られている。中国では石花菜と言い、イギス、エゴノリ、トサカノリ、ムカデノリ等の紅藻類がテングサ属で、テングサとはトコロテンの材料となる海藻という意味で、江戸時代に京都伏見で、工夫されたもので、伏見の近くの黄檗山の隠元禅師が名ずけ親だとされている。この寒天が菓子に使われるようになり、練り羊羹が盛んに作られた。