のれん28、10,11,12月  旬の食べ頃

%e3%81%aa%e3%81%b910月の旬
 野菜類が大地の恵みの結晶として出回る。年中市場で手には入るが、やはり旬のものには及ばない。大根、人参、牛蒡、蓮根、自然薯、甘藷、馬鈴薯、里芋、カブ、玉葱、生姜、秋茄子、キノコ類等。
 松茸は、庶民の食卓から遠のいて久しい。それに引き換え椎茸は、安価な上に、栄養もあると言うので、日常的に利用されている。
 椎茸の胞子には、強力な抗ウイルス性の物質をつくる働きがあって、健康に非常に良いということで、脚光を浴びている。
 果物は、柿が出始め、栗が旬となる。クルミも実を結ぶ。クルミには、カルシュウムや鉄分もあって、健康に良いとされている。

11月の旬
 朝夕の味噌汁が美味しい季節になる。折しも昨年仕込んだ味噌が、ベッコウ色に美しく輝いて食欲を誘う。
 毎年11月になると、新大豆を用いて味噌を造るが、11月頃に熟成されて、本当の旨味が出てくる。毎年味噌造りをしているから、毎年同じ味噌が出来るかと言うと、そうではない。血圧の心配がある時は、減塩味噌にしたり、糀が身体に良いと聞けば、麹を多い目に使ってみたり、毎年味噌の味が違う。
 塩はある程度以下にすると、酸っぱくなるし、糀は多いほど甘味があって美味しいが、カビが発生しやすい。
 何らかの課題を残しながらの味噌造りであるが、それこそ手造りの楽しみも加わり、手塩にかけた<わが味噌>の自慢話も弾んでしまう。これこそ手前味噌というのだろう。
 味噌は古代中国の西域で発生して、韓国を経て日本に伝来した。大和時代も文武天皇の大宝元(701)年にすでに、味噌を管理する職員がいたと記録にある。

12月の旬
 寒いこの季節に、何かにつけて重宝するのが、雑炊である。古くは、「こながき」といって、穀類の粉末を熱湯でといで、補食または薬食にしたという。「こながき」から「増水」と書くようになり、多くの水を加えた穀汁といった感じのものとなった。
 古来、白カユには塩を加えないのが常道で塩を加えた穀汁を「増水」といった。「雑炊」は野菜その他を共に煮るようになってからの当て字で、関西では「おじや」とよんでいた。これはもとは女房言葉であって、味噌を加えるものを「みそうづ」、女房言葉で「おみそうづ」という。醬油仕立ての雑炊はずっと後世になってからのことである。
 正月の七種(ななくさ)ガユは「延喜式」にも出ているが、関西ではカユでなく、味噌を加えて、雑炊にする所も多い。
 チリ鍋、寄せ鍋、しゃぶしゃぶ等の残汁に、ご飯を加えての雑炊は「鍋」の楽しみを倍増させる。                          葛 城 陽 子