折りにふれて 炊き込みご飯
この頃になると、母はよく炊き込みご飯をよくしてくれた。あとはお吸い物さえあれば、満足。いわゆる<おふくろの味>である。いつの間にか、私の味加減も母と同じようになり、それが嫁に教えた覚えもないのだが、嫁も同じような炊き込みご飯をこしらえてくれるようになり、私は大満足。ダイエットもなんのその、お代わりをしている。
今の旬のものといえば、筍であろう。筍は古くはタカンナといわれていた。わが国の文献に「竹」の字がでてくるのは、「古事記」に天照大神が、「伊都の竹鞆をとりおはして」とあるのに始まり「日本書記」には「彦火々出見尊の生れたまひし時。臍帯切りし竹刀化して竹林となり」とあり、起源の古いのは、察せられるが、その本質ははっきりとはいえない。
ビタミンB1が多く、蛋白質、脂肪はタマネギ、キャベツなみ。うま味はチロシン、コリン、アスパラギン酸などの窒素化合物。歯ごたえはセルローズなど炭水化合物。ゆでて冷えると出る白い粉は、チロシンとデンプンの結晶で無害、エグ味は、ホモゲンチジン酸が中心で、時間が経つにつれて増える。
カルシウムの吸収を拒むので、ワカメとの若竹煮は合理的で、汁の実、輪切りの直竹、田楽、寿司の種、筍飯。中華料理には欠かせない食材である。
●タケノコご飯
堀りたての筍の到来物は、ゆがかずに、そのまま料理するところに真の風味があり、甘味で、柔らかでエグミがないが、市場で求めたものは、先ず湯がく。それも一刻も早い方がよい。
湯にたっぷりの熱湯を立て、一つかみの米糠を加えて、根株の硬い所を切り棄て、梢の先端を斜めにさっと削ぎ落とし、そこから、タテに包丁を入れて、皮つきのままの筍を入れる。糠がない時は、米のとぎギ汁を煮立てる。
急がない場合は、一度ぐらぐらとわき上がったところで、火を止めて、そのまま置いておく。冷めるまでに程良くゆでられるわけである。
急ぐときは、暫く火にかけて、金串の通る程度で冷水につけて、一気に皮をむく。
筍は適当に切って、好みの味醂、酒、醬油、砂糖で、あらかじめ炊いて下味を付けておき、お米を洗い、筍と混ぜ合わせて炊く。たき汁を入れると、味付けも美味しくなるが、その場合は、お米の水加減をたき汁の分量だけ減らす。
東 雲 宣 子