花物語  実のなる花

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六月はあでやかな花々が競うように美しく咲き誇る。そのなかにあって、実の成る花は、概ねひっそりと可愛く、慎ましく咲き、たまに大きく咲くのもある。
●みかんの花 原産は、熱帯および亜熱帯アジアで、10数種類ある。互生した長卵形の濃緑の葉の間に、白色五弁の花を開く。温州・紀州みかんが有名。


●橙(だいだい)の花  原産は熱帯。垂仁天皇の90(61)年、田道間守(たじまもり)を常世の国へ使わして非時香果(トキジクノカグノコノミ)を求めさせた。香果は柑橘類だが、非時は時季を超越するという意味だから、冬は黄熟しても夏は青緑に還り、不落の瑞果として「ダイダイ」と呼ばれる橙であろうといわれている。みかんと同じように五弁の白色の花を咲かす。絶えることなく代々続く目出度いものとされている。
●柚子の花  古くから日本に入り、各地に栽培され、寒さに強い。木は高さ4mに達し、枝に刺がある。五弁の香り高い小さな花を開く。果肉は特異の芳香があり、酸味があり生食できないが、香辛料、マーマレードの原料とし、実正の苗はミカンの台木とする。
●ザクロの花  小アジアの原産。我が国では鬼子母神の伝説で知られている。鬼子母神は訂利帝母(かりていも)と呼ばれ、もと異教徒で500人の子を持ちながら、常に人の子を取って食するので、釈迦が、鬼子母神の留守中、ひそかに末子を隠したところ、帰って驚き悲しんだ鬼子母神が、はじめて如来の説法に帰服し、発心して仏法護持とともに、母子育成の善根に転向したと言うので、求児・安産・夫婦和合の女神として信仰されるに至った。人の子を食する代わりに、釈迦が鬼子母神に与えたのが、ザクロであったという。
 深紅・白・淡紅・黄赤等、各色の美しい花を咲かせ、重弁あり、単弁ありだが、重弁は実をつけないので、花ザクロとして観賞用とされている。
●南瓜の花  鐘状の五弁花。色は真黄色で大きく、花の柄の短い方が雄花で長い方が雌花である。南方からの渡来種。
●西瓜の花  原産地は熱帯アフリカとされている。淡紅色の五弁の花。実は甚だ大きいが、花は極めて小さい。小形の単性化で、雌雄同株。畑で大切にされながら、ささやかに咲く。
●茄子の花  原産地は南方温帯地方。わが国では古く延長(923~930)年間に栽培された記録がある。淡紫色または藍白色の合弁花で、雌雄両性で全部結実する。それ故に縁起の良い花とされ、特に茄子の花の夢を見ると良いことがあると言われていた。
●胡瓜の花  原産は東インド。花は黄色で五裂の小花。しわがある。
●馬鈴薯の花  原産地は南アフリカで、最初に食用したのは、インカ族という。五裂した白色または淡紫色の花をつける。畑一面に咲く様子は美しい。
▲何れも収穫が待ち遠しく、瑞々しい穫れたての美味しさは、まさに天地の恵みであり、大いに旬を楽しませてくれる。                  葛 城 陽 子