老舗と私 米忠味噌株式会社

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宝暦年間より、大阪・江戸堀にて米屋を営みその後、文政3年初代忠助が、自家製造していた味噌を近所とか知り合いに進呈していたのが、あまりにも美味しいので、評判になり、次から次へと依頼されるので、とうとう味噌醸造を専門に手掛けるようになった。

米屋の忠助が、つくる味噌だから、米忠と名付けられた。以後、食い倒れの大阪にあって、大阪の食文化を担って、今日まで、<のれん>を守ってきた。

大正、昭和と引き続き、天皇陛下がご来阪の砌には、ご食膳にのぼる程の信頼を得ている。大阪で味噌と言えば、即<米忠>ということで、返事がはね返ってくる。それほど親しまれていたということである。上方料理とともに育てられた」料理味噌として、自他ともに、日本一と認められている。
味噌の原料は、大豆を主とし、麹の酵素の力でアミノ酸化させ、植物性の蛋白、脂肪、デンプンを主体とし、塩分で保存性を保たせている。

<米忠>の味噌は、ほぼ完全食に近く、自然の優しさが持つ、特有の美味しさ、その上に栄養分の体内吸収も良いとされている。

保存食品である以上塩分は不可欠といえるが、血圧の関係とか、健康上の関係で、最近は、塩分控えめが、主流になっているのをふまえ、以前から研究を続けている。安心してご使用いただける。

お正月のお雑煮は、関西では、白味噌が、定番となっているが、特に<米忠>の白味噌のお雑煮は格別の美味しさである。
 
私と<米忠>の白味噌との出会いは、随分前にさかのぼる。三月に結婚式を控えた年の正月に、母は、<米忠>の白味噌を使って、お雑煮をこしらえてくれた。お雑煮の具と白味噌のハーモニーは、例年のお雑煮より一層美味しく、上品な味わいは、一生忘れられない。私にとって、心にしみ込んだ<おふくろの味>となった。

結婚してから数年間は、姑が一切しきっていたので、私は炊事をすることもなく、楽をさせてもらったが、姑は、関東の人であったので、お雑煮は関東風の清汁にホウレン草とお餅を入れるだけで、その時、お雑煮も色々あるものだということを認識した。反対に友人は関東へ行っても、白味噌仕立てのお雑煮に拘っているとか。やはり故郷の味は、忘れ得ぬものなのだろう。かくいう私は、暫くは、一日は婚家で清汁のお雑煮を食べ、二日に実家で白味噌仕立てのお雑煮を食べていた。

葛 城 陽 子