株式会社 松前屋<こんぶ>

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子どもたちが、大きくなって、お弁当づくりをしなくなったが、ときどき当時のあの朝の忙しさを懐かしく思い出すことがある。
おむすびの海苔巻き、玉子焼き、火を通したカマボコ、ウインナーは定番で、肉の甘辛煮、焼いた紅鮭に、必ず添えるのは、<松前屋>のゴマ入り短冊昆布。短冊に切ってあるから、子どもにとってたべやすい。味もさして辛くない。ゴマの香も芳しい。食欲のない時でも思わず全部食べてしまうらしい。

<松前屋>は心斎橋筋の本店のほかに各百貨店・その他有名店街に売店があるが、たまにゴマ入り短冊昆布がなくなったとき、私鉄沿線の郊外に住んでいるので、大阪市内まで買いに行けないことがあった。仕方なく手持ちの昆布で間に合わせたりすることもあったが、子どもたちはよく知っていて「今日の昆布はいつものゴマ入り短冊と違うネ」と言う。馴れ親しんだ味はシッカリ覚えているのである。

1912年創業以来、初心忘れず道南産の昆布にこだわり続けた<松前屋>の集大成の「とこわか」は、先様に真心を伝えてくれるとして定評がある。一枚一枚を丁寧に吟味し、伝統の技法をいかしつくりあげたのが、老舗<松前屋>「とこわか」で、発売当時は、これこそ昆布の最高峰だと絶賛を浴びた。

吹き上がった塩にえもいわれぬ風格を誇り、丹精込めた風味は、千金の美味として、どんな料理にも合い、酒肴にも意外によく合い、お茶漬けに最適。食卓での人気を一手に引き受けている。

重厚でどっしりとしている「とこわか」は、そこにそれがあるというだけで、食卓が豊かになり、気分もゴージヤスにしてくれる。「とこわか」は(常若)は、お客様が常に健康で、若々しくという願いを込めて名づけられたという。

「とこわか」を食べやすくと、細切りに仕上げたのが「松ケ枝」で、「とこわか」の技法そのままで、素材の持つ自然の旨味を生かして作った塩吹昆布。マイルドな味わいで、塩分は控えめで、お年寄り、お子様でも食べやすい。細切りだから、いろいろな料理にアレンジできる。

昆布は喜ぶに通じ、古来、慶事には必ず用いられている。日頃お世話になった方々への感謝のしるしとして、贈答品として、とても重宝されている。    梶 康子