日本酒冷酒
★本来日本酒は冷用するのが、原則と聞いたことがありますが?
その通りです。日本酒は冷用するのが原則であり古儀でもあります。祭祀に用いる神酒をはじめ、冠婚の儀礼・本膳式などの場合、燗酒を用いないのが立証されています。
★温めて呑むようになったのは、いつの頃からでしょうか?
平安時代以降かららしく「貞順故実聞書条々」に藤原冬嗣の言として、酒の燗は九月九日から三月二日までと記されている。天長二(825)年十月、嵯峨天皇が交野ガ原に遊猟の際、供奉の冬嗣(閑院左大臣)が燗酒をすすめて賞美されたともいうから、この左大臣あたりがはじめかもしれません。
中国では紹興酒を熱燗にし、ヨーロッパでも冬季に限り葡萄酒を暖めることはありますが、日本でも最初は気候の関係で、温めていたのが、いつの間にか日本酒といえば、燗をするのが、通念のようになりました。
むかしは、鍋または銚子に入れた酒をそのまま直火で温めていたらしく、文化時代には鍋または錫製のチロリと称する筒状の器に入れて湯煎にし、畿内では天保頃までこれを主用していましたが、江戸ではすでに燗徳利が流行し、明治以後はもっぱら徳利で、チロリや鳩燗と称する類似の容器は、稀に好事家の間に用いられるにすぎなくなった一面、大衆用として特殊の酒燗器が発明され、温度計のついた管を通じて、自動的に適温の燗酒が流出する装置のものが重宝されるようになります。由来「燗は人肌」といわれるのは優良酒を標準とした諺です。
同じ日本酒でも関東と関西とは嗜好が異なり、東京では淡味な甘口が歓迎されるのに対し、歴史の古い京阪ではなお辛口が賞美される。東京向きには広島出身の杜氏、地回りには丹波出身の杜氏・蔵人を使用したというほどであります。
急激な経済成長期以後、人口の移動も急激に変化し、関東の人は関西へ、関西の人は関東へ転勤し、その土地に馴染む人もあれば、故郷の味にこだわる人もあり、地域による区別はなくなっていきました。
日本酒を嗜む女性の人口も多くなり、日本酒の趣向も多様になり、日本酒フアンにとって楽しい事で、酒の肴によってメーカーを決め、銘柄を決める自分なりのこだわりをもつのも料理を楽しむコツともいえましょう。冷たい料理には冷酒を、しかも甘口、辛口を使い分ける醍醐味は真のツウへの道程でしょうか。
甘辛のれん会、会員の日本盛・大関・菊正宗・長龍各社の冷酒は家庭料理や宴会料理にもよく合うので、なにかにつけて愛飲していて、皆様に推薦しています。
御 園 弥 生