スタミナの魚

mochi
●うなぎ
海に生まれて河沼に成長し、大西洋では全ヨーロッパ、北アメリカ及び西インド地方、太平洋では日本及びシナ海沿岸、豪州東南岸からニュージーランド諸島方面に分布するが、北方には少なく、わが国でも北海道の東南岸以北には見られないと言う。

夏の中でも最も暑いとされる土用の酷暑をどう乗り切るかということは、昔の人々にとって重要なことであった。土用丑の日にうなぎを食べるようになったという平賀源内の話はよく知られているが、江戸時代より古い平安時代には土用を無事に過ごすために、いろいろな習慣があり、うなぎを食べるのもそのひとつだった。
平安時代よりまだ古い奈良時代に、既に「万葉集」に大伴家持が痩せている石麻呂に贈った歌として
“石麻呂にわれ物申す夏痩によしといふ物ぞむなぎ(うなぎ)取り召せ”
とあるのを見ても、この頃の人が、うなぎに滋養があることを知っていたのである。うなぎを開いて付け焼きにしはじめたのは、もともと関西で始まり、江戸でもそのまま踏襲していたが、寛政(1789~1800)以後江戸料理の発達とともに、独自の調理法に変った。今も関西では、腹からさくが、東京では、背開きにしている。一説によると、江戸は武士の町だから、腹からさくのは切腹に通じるのを忌み嫌ったからだと言う。
イタリアでは、古くローマ時代から養殖が行われ。フランスでも飼育されるものがあるという。わが国で養殖の始まったのは明治中期以後で、大正以降盛んになった。主産地方は東京・千葉・神奈川・静岡・愛知・三重・などで、養殖の技法が改善され、近年とくに著しい発達を見せ、現今では殆ど区別されないまでになった。
★甘辛のれん会加盟の大阪ミナミ宗右衛門町にある<菱富>は、大阪では珍しい江戸風焼きの伝統を守る老舗で、うなぎを背開きにするのを本格としている。江戸風の蒲焼は、焼く途中で蒸して、タレをかけて仕上げてあるので、やわらかい。
<菱富>は、うなぎ料理を格調あるものとし、大阪にあってなおも江戸風を堂々と守り続け、今日に至っている。
●あわび・鮑
あわびには、アルギニンが多く含まれている。夏バテを防ぎ、スタミナをつける食品として珍重されているが、高価なゆえに馴染みがうすい。
あわびは巻き貝である。巻き貝の種類は、三万以上もあるといわれといるが、肉食性のもの、草食性のもの、雑食性、プランクトンだけを食べるものに分類される。あわびはその中の草食性で、こんぶなどの海藻を噛んで摂取している。
 先史時代、われわれの祖先は、あわびを食べていた。貝塚からあわびの殻が多く出てくることから解る。殻を器としても用いていたのである。まさに先人の知恵である。