かに・カニ・蟹
カニ漁解禁のニュースが出始めると友人がきまって呟く「カニを食べたいなー。旅に出ようかなー」では「賛成」ということになって、世話好きがプランを立て、カニの本場を訪ねるグルメの旅に出る。
カニは甲殻類の一目。十殻類中短類の俗称で、種類もすこぶる多く食用されるものも多い。大部分のカニは前脚にハサミのある偉大な爪を持っているので、昔はこれを門戸にかけて邪鬼をはらうとか、また「猿蟹合戦」をはじめ古来カニに関する伝説が多い。
「元亮釈書」によると、蟹満寺縁起で七歳の少女が、村人の捕らえた蟹を救ったことがあり、その後その少女の父親も農耕の際、蛇に呑まれた蛙を哀れに思い、蛇の条件を受ける約束で蛙を助けたが、蛇は衣冠をつけた人間に化けて娘の婿になると迫り、一家が途方にくれていると、蟹が昔の恩に報いるため、一類を集め、ハサミを揮って蛇を退治した。しかしその時蛇と戦って死んだ蟹は百千。これらの蟹を葬り、冥福を祈る為にと、営まれたのが蟹満寺とある。
恐ろしい形相をした鬼面蟹は寿永(1184)の役に壇ノ浦で滅亡した平家の怨霊が化したという平家蟹の伝説等多くある。そんなことを思うと、人間と親しいカニさんを食するのも少し気が引ける・・・・・。
閑話休題。
それはさておき。晩秋から晩春へかけて産卵期前に雌の抱く子が最も美味である。
普通食用になるのは、日本近海では、北海のタラバ蟹・日本海のマツバ蟹・表日本の内湾、近海に多いガザミ・ヒシ蟹・河川に産するモクズ蟹などである。
一般的にカニは缶詰にされるとか、塩ゆでしたのを、二杯酢にして食すが、オロシショウガかその絞り汁を加えるといっそう味は引き立つ。キュウリやワカメを添えたりする。私の場合は、母から受け継いだ、子どもたちのカルシュウムの摂取の為、チリメンジャコを加える。ポンズその他いろんな商品も売り出されている。
冬場のとって置きはカニスキ。具は他の鍋物の具と変らないが、カニの身をそそる楽しみは、体も心も暖まるが、醍醐味はその後のカニ雑炊である。すでに満腹しているのに、また、食べてしまう。タレはゴマダレかポンズ、その他好みの味付けをする楽しみもある。
カニの身を食べている間は、割合におとなしかった人も、雑炊のできるのを待ちながらの雑炊談議や日頃のお喋りも復活して座は楽しく賑わう。 東雲 宣子