老舗物語 ― うなぎ

200706_02.jpg<いづもや>

 明治九年創業以来、上質の活うなぎを蒸さずにタレをかけながら、備長「びんちょう」の硬い炭で、入念に焼き上げる大阪風蒲焼(腹を開く)の伝統を守っている。 
 タレはタマリ・ミリンを基本にして、酒・砂糖その他家伝の秘法で調整したもので、<いづもや>ならではの独特のものである。

 創業当時は、出雲地方の天然うなぎを大阪へ直送していたので、屋号を<いづもや>としたということである。
 うなぎは万葉の昔から、栄養価の高い貴重なものとして扱われていたものを、一般的なものとして広めたのが<いづもや>で、その実績は大きく充分に評価されて然るべきであろう。
 おなじみの蒲焼・まむし「うなぎ丼」・う巻き・うざく等数多くのうなぎ料理は、昔からの顧客が多く、老舗の味を誇っている。
 
 
<菱  冨> 
 大阪では珍しい江戸風蒲焼の伝統を守る老舗。うなぎを背開きにすることを本格としている。
 江戸風の蒲焼は、焼く途中で蒸し器で蒸して、タレをかけて仕上げてあるので軟らかい。
<菱冨>は、うなぎ料理を格調あるものとし、大阪にあってなおも、江戸風を堂々と守り続け、今日にいたっている。
 風格のあった宗右衛門町の建物は、惜しくも姿を消したが、平成八年に新築され、今ではすっかりなじまれ、昼食などは手軽に楽しまれている。
一階はテーブル席。二階は少人数の会食に最適の純和風の粋な小部屋や、各種会合、宴席の為の広々とした座敷がある。
 のれんをくぐって、一歩中に入れば、大阪の都心とは思えぬ落ち着いた雰囲気があり、和やかな食のひとときが楽しめる。
うなぎの会席料理など、あまり聞かないが、<菱冨>の会席料理は、豪華なもので、うなぎ料理を堪能させてくれる。