花物語 ― カサブランカ

Casa_Balanca.jpg 花束を頂くときは必ずといっていいほど、カサブランカの花を添えて下さる。気高いまでに美しい真っ白の大きな花びらは、いつ見ても魅了される。一見他の小さな花の赤や、黄色、ピンク、紫の花たちを従えて咲き誇っているように見えるが、実は他の小さな花の引き立て役になっているのかも知れない。他の花の邪魔をしないように必死になって、大きなからだをしゃんと律しているのだ。花にもそれぞれ役割があって、一生懸命に咲いているのだと思うと愛しくてならない。

 若い頃は谷間の白百合と言う言葉にあこがれて、自分も谷間の白百合のように楚々と美しく咲きたいと思っていた。ところが年齢を重ねるにつれてだんだんと大きなものに惹かれるようになった。
 
 ある年の誕生日に花屋さんからカサブランカが届いた。私がこの花を好きだと知りぬいている友人からのプレゼントだった。白色一色のカサブランカで、後でわかった事なのだが、友人は、カサブランカを忘れずに入れて欲しいと電話で何度も頼んだのが、花屋さんが、カサブランカばかりと思いこんだらしい。びっくりしながらも豪華な花瓶に活けてみたが、花が大きいだけに余計に淋しく感じられ涙が止まらなかった。
 
 色々な色を花達が、人間の心を和ませもするし悲しくもさせる。今までは豪華そのものと、思いこんでいたカサブランカが、花が大きいだけにやるせない思いも大きい。これは私にとって不思議な発見であった。
 
 
  梶  康 子