花に寄せて ― 松・竹・梅

200801_01.jpg お正月といえば{松・竹・梅}となるが、鉢植えの盆栽を、見ていると、松と梅の根元に小さく植えこまれている竹が、ぐんぐん伸びて細い葉を青々と茂らせて、葉群れがサラサラと風にそよぎ出し、私を嵯峨野の竹の道へと誘っていく。

 折々に訪ねた嵯峨野は、その時々の友人と歩いたあの道の、風にそよぐ空間と、神秘的な光の輝きがしっかりと脳裏に映し出されてくる。

 ここ七・八年はすっかりご無沙汰してしまったので、ひょっとしたら変ってしまったかも知れない。いいえ、あのままでいて欲しい。変って欲しくない。嵯峨野には思い出が一杯詰っているのだ。学生時代の友人、P・T・Aのおかあさん方、歴史同好会の友人、地域婦人会の皆様、私達3人姉妹、母親と二人、そうそう一度だけ一人で深い思いにふけりながら竹の葉の一葉一葉に語りかけるように歩いたこともあったっけ。

 結婚してから、後にも先にも母と二人だけで外出したのは、このときだけだった。いつもは姉達や、子どもがいたりして、二人だけになることはなかった。その時の話しの内容も蘇ってくる。この竹が、タイムトンネルのように、過去の世界へと連れて行ってくれる。

 わが国の文献に<竹>の字が現われたのは、{古事記}に「天照大神が伊都の竹鞆をとりおはして」とあり、(日本書紀)に「彦火々出見尊の生れたまひし時、臍帯切りし竹刀化して竹林となり」とあり起源は古い。

  葛城 陽子