花びらのひとり言 ― 菊

kiku.jpg わたしは菊のはなびらです。わたしの主人は比較的大きな花、豪華な花を好みます。そして、赤、黄、白色を好みます。

 菊は見るも豪華な大菊、姿は個性豊かな中菊、可憐な小菊、古来その香りと気品あふれる高貴な花として人々から親しまれ愛好されています。

 主人のお知り合いに菊作りの名人がおられて菊の品評会の賞を総なめされたほどで、総理大臣賞、等‥。そのお方が菊の季節になると三本立ての立派な鉢物を持ってきて下さいます。それがわたしなのです。

 玄関にわたしを置いて、ほれぼれと飽きることなく眺めてくれます。訪れたお客様は皆様そろってわたしを褒め称えます。もちろん主人もわたしも鼻高だかの大満足です。
 やがて花が終り翌年になって、新芽が出て、梅雨の頃になると、主人は張り切って、菊作りを始めますが、結果は毎年同じこと、小さい菊になってしまいます。その時わたしは意地悪く鼻で笑ってやります。「いい加減に上手になって下さいよ」

 そんなわたしの気持とはうらはらに、「小さいお花は可愛いね。お墓のお花に丁度だわ。一輪挿しにも重宝」と、わたしをいとしく扱ってくれます。わたしは鼻で笑ったことを深く反省して、精一杯咲いております。そのうちに名人が新しい大輪の菊を届けてくださるでしょう。

  梶 康子