老舗物語 ― うなぎ

200706_02.jpg 土用の丑の日にうなぎを食べる習慣は古くからいわれているが、やはりうなぎに豊富な滋養分があるから、一般に広まったものだろう。

 万葉集の大伴家持の歌に

 石麻呂(いわまろ)にわれ物申す 夏やせによしといふものぞむ(う)なぎ取り召せ

とあるが、部下の石麻呂が夏やせしたので、うなぎを食べるようにすすめている。昔からうなぎは栄養価の高いものとされていたことがうかがえる。

甘辛のれん会加盟の<いづもや><菱 富>はうなぎの老舗として、広く親しまれている。

 <いづもや> 明治9年創業以来、上質のうなぎを蒸さずに「たれ」をかけながら、備長(びんちょう)の固い炭火で入念に焼きあげる大阪風蒲焼(腹を開く)の伝統を守っている。タレはタマリ・ミリンを基本に酒、砂糖その他家伝の秘法で調整したもので<いづもや>ならではの独特のものである。創業当時は、出雲地方の天然うなぎを、大阪へ直送していたので、<いづもや>と名付けたと言う。

 <菱 富>  大阪では珍しい江戸風焼きの伝統を守る老舗。うなぎを背開きにするのを本格としている。江戸風の蒲焼は、焼く途中で蒸し器で蒸して、タレをかけて仕上げて焼くので軟らかいとされている。<菱 富>の格調の高いうなぎ料理は、関西にあっても<江戸風うなぎ>の存在を確かなものとしている。