花びらのひとり言 ― 芍薬(しゃくやく)
わたしは芍薬の花びらです。
「立てば芍薬、座れば牡丹」と言われますように、わたしは茂った葉の中から花茎をのばし、その頂きにつややかな花弁をほころばして咲きます。誇らしげに咲くわたしに、わたしの主人は、とても風情があると誉めてくれるのです。
主人は毎年わたしを手にするまでは落ちつきません。それと言うのも、実際に世話をしてくれているのは、実は主人の娘さんなのです。
彼女の嫁ぎ先のお庭にたくさんの花や木が植えてあって、お舅さんがわざわざ日曜日に庭の手入れにマメに来て丹念にして下さるので、行き届いたお庭になっているのです。娘さんが、結婚して、間もなくの内は、庭の手入れに馴れないゆえに、お舅さんの丹精の庭を、しっかり守れるか、そればかり心配していたのですが、切り花が届くと安心するのです。
娘さんも生花の師範の免許を持っているのに、主人は一応講釈を述べるのです。
★水揚げは、切り口を焼いたあと、切り口を上に向けて水をかけ、1時間くらい水につけておきなさい。
★牡丹の花と一緒に活けてはいけないですよ。
優しい娘さんはわたしに言ってくれました。
「今年も美しく咲いてくれて有難う。お母さんは何時までも娘のことが心配なのね。来年も咲いてくださいね。お庭のお手入れ頑張るからね」