食文化の伝承―旬のもの

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 関西を発祥とする日本伝統文化は多くあるが、“食”や“味”に関しては、私達の生活に深く結びついているだけにより大切なものである。

 

 四季折々の食材を用いて、いわゆる“旬”のものを口にする時は、それこそ食文化そのものだと感じる。この時代に、最早“旬”はないと言われ出してから久しいが、それでもたまたま国産の旬に接した時は、値段と勘案して「これ、ほんまもん?」とつい思ってしまうのも悲しいことだ。

 市内から離れて住んでいる私は、近来開発が進んで都市並みに過密化してきたとはいえ、少し歩けば田んぼがあり、畑があり、家庭菜園がありで、時季が来ると、折々の野菜の“旬”のものが知友の方から届けられて、いただくのがダブッタリして有難い悲鳴をあげながら、同じ食材を工夫しながら調理法を楽しんでいる。

 私の場合はそれでいいとして、では、一般の消費者はどうしているのだろうか? 例えば某デパートの野菜売り場が最近よく混むので気にかけていると、そこの品物は新鮮で安いとか言う声が耳に入ってくる。カサの高い或いは重い野菜や果物をわざわざ買い求めて、新鮮な食材で家族の健康を守ろうとする主婦達の生活の智恵なのだろう。そこには口コミ・その他の情報が大きな役割を果たしている。

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 魚類・肉類その他の食品も然り。納得してよい食材を得たいと思っているときに、テレビその他のマスコミに取り上げられたら、注文が殺到するという現象がよく見られることは、それだけ消費者はよりよい物を求めているのだが、消費者もしっかりと選択すべきであるのは勿論だが、もしかして受け継がれた伝統の食文化と、21世紀の新しい食文化とがミックスされて、伝承されていくのかもしれない。そこから新しい食文化も生れてくるのではなかろうか。自ずからよいものだけが残って、伝承されていくものである。

 因みに甘辛のれん会加盟店は、先ず、水から始まり全ての食材を厳選し、伝統の技と細やかな真心で、信頼され、親子二代、三代に亘って信用を得ている.

東雲 宣子