2011年春号
春の餅菓子
春先、和菓子屋の店先を彩る餅菓子に、草餅、椿餅、桜餅等がある。
花の里心も知らず春の野にいろいろ摘める母子もちいぞ
これは草餅をつくるために、母子草を摘んでいる様子を詠んだ、平安時代の女流作家和泉式部の歌である。草餅は、ひな祭りに供えられたりして、平安の昔を偲ばせる。
椿餅は、草餅同様に歴史が長く、「源氏物語」や「宇津保物語」に<つばいもちひ」という名で出てくる。もっとも平安時代には砂糖がなかったから甘葛という一種のつた草の汁を集めて煮たものをかけた。その味もほんのりと甘い程度だったようだ。しかし、この汁が、貴重品だったこともあって、貴族の間で好まれた高級菓子だった。ちなみに小豆を使ったあんは、鎌倉時代に中国留学した禅僧が連れ帰った中国人が考え出したもの。砂糖もはじめは輸入品で、国産の砂糖が作られるようになったのは、江戸時代後半のことである。
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花物語 葦
お花友達の友人宅へ行った時、葦が活けてあった。水盤に一株、小さい草花を取り合わせてある。いかにもすっきりとしていて、胸のすく思い出で観賞させてもらった。
葦はイネ科ヨシ属で原産地は世界中の湿地帯~亜寒帯。別名ヨシ。英名コモンリード。若芽が水面を切って伸び立つ春。青々と葉を茂らせる夏。穂が風にそよぐ秋。枯れている冬。いずれも水辺の風情を偲ばせる。
葦は沼や川岸に群生する大形の多年草で、高さ2~3m。茎は中空・円・柱形、かたい節がある。葉は細長い披針形で二列に互生している。花穂は茎先が円錐状に出るが、最初は紫色で後に紫褐色になる。花は八月~十月にかけて咲く。葦のいけばなを見ていると、いつしか私は幻想の世界へと入っていく。
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米忠味噌㈱「味噌屋の手前味噌の話」
地方別「郷土の味噌について」その2
★中国地方
中国地方は、だいたいが米みそ圏ですが、九州に近い瀬戸内側では、麦みそも造られます。米みそは、日本海側は淡色の辛口、瀬戸内側は白色の甘口と、タイプが異なります。両方が交わる広島は、この地方を代表するみそ圏で、米みそ、麦みその両方が造られます。
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のれん折々の詩
春の豆ご飯
寒さのぶり返しはあっても、陽の光はまぎれもなく春の輝き。八百屋さんの店先で緑色のエンドウが、初々しく食欲をそそる。豆の中では、一番乗りの春の使者。
エンドウはマメ科の一年草または越年草。原産地は地中海沿岸とみられ、石器時代から食べていたらしい。今はほぼ世界中で栽培されている。温帯地では秋まき。耐寒性が強く、霜除け程度で越冬できるし、暖地の露地作や、ハウス栽培で、寒いうちから出回る。
主な成分は、タンパク質と糖質。タンパク質では、リジン、糖質はデンプンと蔗糖が主。ビタミンはB1、B2、Cが比較的多く、リンを含む。
さやが張って色がよく、一さやに四粒以上の豆が入っているのが良質。
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のれんメール
寒さが厳しかっただけに春が待ち遠しく思いました。
三月三日 ひな祭り、十二日 奈良東大寺お水取り、二十一日 春分の日。
四月一日 新学年、新財政年度、四日 復活祭、八日 花祭り・潅仏会 二十二日 靖国神社春祭り
五月一日 メーデー、二日 八十八夜、六日 立夏。
四月は入学式、入社式とかもあり、華やかさを伴います。われわれの生活は行事を追いかけて生活をしているようなもので、そこにはなんらかの意味で、<食>が存在します。甘辛のれん会の老舗が心より作り上げた伝統の味をお試しください。
甘辛のれん会 大寅・主人 小 谷 公 穂