●冬の<鍋物>・至福のひと時
冬将軍の季節となると、冷たくなった身体を一刻も早く温めたくなる。そんな時は<鍋物>に限る。特に家庭にあっては、それぞれの好みのものを鍋に入れて、好きなだけ食べればよい。家族団欒の至福のひと時となり、身も心も暖まるのである。
●鍋物の鍋は、水だきには土鍋がよく使われる。土鍋は重いうえに壊れやすく、煮立つまでに時間がかかるが、土鍋特有の雰囲気が醸し出されて、和やかさが演出される。
すき焼き等は、鉄鍋がよく、汁が煮詰まっても、土鍋のようにヒビが入らない。
★うどんすき すきやきと共に家庭料理の定番で、折々の季節の野菜や、海の幸を入れて、うどんと煮る。すきやきと違うところは、鶏肉をベースにし、好みにより、他の肉類も入れても良い。<おろしショウガ><おろし大根><きざみねぎ>等を適宜用いる。
因みに、当甘辛のれん会会員の<美々卯>の<うどんすき>は、秘伝の出し汁に、十数種類の具を入れて煮ても、鍋の汁が濁らないのが有名である。
今年の春先に、<美々卯>で会合があって、その席で、各種の料理が出た後で、<うどんすき>が、出てきたので驚いた。というのは、<美々卯>といえば先ず<うどんすき>と頭にくるが、このコロナの時季に鍋を囲んで、各自の箸で取りあうのも如何なものか?一人鍋か? と勝手に思い込んで興味を持っていたのだが、本番で山海の珍味の後、<美々卯>特製の<うどんすき>用の鍋が運ばれて、黒色と赤色の箸が置かれて、社長から説明があった。「新型コロナの時季でもありますので、赤いお箸で、鍋から器にとって頂いて、黒いお箸で召し上がって下さい」と。なるほどこれなら安心して戴けると、ホットしたり感心したり、したことを覚えている。
それからは、会場は一段と和やかになり、会話もはずんで、楽しい会合となった。友人達にこのことを話したら「ひとつ鍋からお箸でとるのは、コロナのことで恐ろしいと思っていたけれどそれなら安心して<美々卯>へ行けるね。お友達と行きます」と喜んでいた。
★しゃぶしゃぶ 同じ野菜類と肉を使っても、ゴマタレ、ポン酢で賞味する。
★すきやき 一番大切なのは、<ワリシタ>で、好みの野菜と牛肉を楽しみ、卵を溶いたのに付けて食べたり、後のご飯代わりにうどんを入れたり自由に楽しめる。
★とり鍋 とり鍋と言えば、普通は鶏肉となるが、昔はそうでなかった。日本では野鳥は食べても鶏は食べなかった。神話の「天の岩戸」では天照大神を岩戸から出す為に、長鳴きどりを鳴かせていることから、神との関わりがあると考えられていた。鶏は夜の悪魔を祓って、暁のときを告げる鳥として、特別に考えられていた。
キジは日本特有の野鳥で、乱獲の為減少し禁漁となっている。
各地自慢の郷土料理にも鍋ものが多く、季節の野菜を使って土地それぞれの工夫を重ね特色を出している。その他
★チリ鍋★寄せ鍋★豆腐鍋★柳川鍋★どて鍋等は重宝で、あり合わせの材料ででも、豪勢なモノになる。
葛 城 陽 子