●老舗紹介 美々卯
大阪の、<うどんすき>と言えば、先ず頭に浮かぶのは<美々卯>。培ってきた歴史と受け継がれてきた伝統と、こだわりの技術と料理への愛。<うどんすき>に限らず、いかなる料理にも、初心の志を忘れず、心を込めた自信作のみを顧客に提供している。
最も庶民的な食べ物とされている<うどん・そば>を食通が絶賛する高級料理にまで引き上げ、かつ、一般庶民の誰もが、少しの躊躇いも無く、訪れて楽しんでいるという、他所では、考えられない風景が、しごく当たり前だという不思議な現象が見られる。高級料理店には、庶民は、足を踏み入れないが、何の躊いもなく入れる店なのである。
混雑時間を避けて、食事を楽しむ女性の<お一人様>の姿が多く見受けられるのも、入り易い、あたたかい雰囲気があるからだろう。
家族のような気持ちで出迎え、我が子が、毎日食べても、飽きないようにと心をこめて作る母親のような気持ちで、料理を心がけているという。
ソバは、十月の中ごろに北海道産が届き、約一ケ月して、国内最高級とされる、茨城県産を主に使用している。自家製粉をし、砕ききれないものは、繰り返し自動的に機械にかけられ、粉になり切れない最終の少し黒い部分は「サナゴ」と称して別の袋に取り分けられる。「サナゴ」は、香りは強いけれど。歯触りがゴロゴロするので、使わないということである。
ソバは、挽きたて・打ち立て・茹でたてが生命で、今日に製粉したものを翌日に使いきるように努力している。製粉されたソバ粉は、翌朝には各支店に配送される。<美々卯>のどの店も新鮮な香り高いソバであるということも、うなずけるのである。
<美々卯>は泉州・堺に200余年続いた料亭で、主は代々<耳卯兵衛>を名乗っていたが、先々代の平太郎が悟るところがあり、麺類専門店として<美々卯>と改め、★「うずらそば」(登録商標)を創作。なかでも★「うどんすき」(登録商標)は特に好評を得て、大阪を代表する名物となった。その他★出し汁が沁みこんだ「きつね」★季節ごとの食材をあわせた「自家製粉のお蕎麦」「自家製麺のおうどん」★旬の食材を用いた色鮮やかな「松花堂弁当」★「お造り、天ぷら、八寸などの会席料理」★旨味広がる上質の国産牛肉を、こだわりの出し汁の「美々卯出汁しゃぶ」★夏季限定の「鱧料理」等数々。店によってセットの内容やコースが異なることがある。
●大晦日の縁起ものの「晦日ソバ」は毎年賑わいをみせる。 梶 康子