●栄養食品・納豆
原料大豆の蛋白質は大部分不溶解性であるが、納豆になると可溶性に変じアミノ酸を生じ、原料には存在しない各種の酵素が納豆菌その他の関与細菌から分泌するので、著しく消化吸収を助け優れた栄養食品となる。
▲成分は水分61,81%、粗蛋白質19,26%、粗脂肪8,17%、炭水化物6,09%、粗繊維2,20%、灰分1,86%、植物性食品としては粗蛋白質および脂肪の最も豊富はことが証明されている。
よく掻き混ぜてカラシ、花カツオ、ネギのみじん切り、卵黄など、好みを加えて適宜に醬油または、添付のだし汁等を加えてさらに混ぜて食する。
▲納豆汁は好みの野菜を軟らかく煮て味噌汁を作り、煮立ったところへ、すり潰した納豆を加えて、ぐるりとかき回したところを器に盛り、ネギのみじん切り、好みによって、蕗のとうなどの吸い口を添える。
●納豆菌
文字どおり納豆製造中に産まれる細菌で、自然発酵による酵素の作用が、食物の吸収作用を助け、大切な栄養食品を作りだす。
伝説によると、源義家が奥州征伐の途次、常陸に宿営した際、馬糧の藁の上に棄てられた煮大豆が腐敗状になっているのを見て、兵糧としても良いと言いながら、自ら試食し、家来に命じて、保存法を研究させたのが起源だという。それ以後さらに研究が重ねられ、現在の納豆にまで至っている。
▲納豆奮闘記
もともと納豆は関東で作りだされたので、関西では殆ど納豆は食べられていなかった。子どもの頃、「東京土産物の納豆です」といって、戴いた時、戦争中の食糧難の最中で、家族は大喜びして、客が帰られて早速箱の蓋を開けたら、見たこともない<納豆>が入っていた。私たちは、「納豆」といえば、「甘納豆」のことと思い込んでいたのである。食べたこともない<納豆>を目の前にして、期待が大きかっただけに失望も大きく、藁に包まれた物体は不気味にさえ思われた。もちろん誰も食べるとは言わないし、善意のお土産を廃棄することもできず、母はご近所に声をかけたが、どなたも要らないと断られた 。「東京から転勤でこられているあのお宅ならもしかして」とある人の提言で、母は、馴染みのない見も知らぬお宅へ行って、お話しをしたらとても喜んで貰って下さった。そんなことがあってから、そのお宅の家族とも仲良しになり、親しくさせていただいた。納豆が取り持つご縁であったが、空襲でどちらも家を焼かれて消息が解らなくなったのは残念である。
それ以後納豆を目にすることはなかった。新型ウイルスコロナが流行しだして、若い孫も高齢者の私に感染させないように、とても気を使ってくれて、私自身もコロナ対策を充分にしているが、抵抗力を付ける為に良いということは、きっちりやらねばならぬと自覚して、納豆に挑戦することにした。<匂わない納豆>半分に卵黄を入れ、だし汁を入れて恐る恐る口にすると、子どもの頃のあの印象は、全然なく、案外抵抗なく食べられた。少しずつ納豆の量を増し、今では一人前1パックを食べている。 葛 城 陽 子