●海の幸・山の幸

fa9d926d55823626f0c60e03f9a5af83_s★桜鯛  春暖と共に陸地近く群来する鯛のことで、産卵期を前にして、味もよく、漁獲量も多い。淡紅色の美しさから「さくら」の名が冠せられたが、実際は晩春期、花が散って、若葉になる五月初旬、中旬が最盛期で、古来瀬戸内海を本場とし、俗に「魚じま」と称せられている。
年間を通して豊漁期だから魚の島が築かれるとの意だろうが、中心をなすのはこの鯛で、特に初鯛、魚島鯛、金山鯛と呼んで珍重した。従って、初網に入ったものは、飛び離れた祝儀値で取引された。
 八十八夜を中心として約一カ月間、鮮鱗の美味を味わうことが出来る。

 
☆古く瀬戸内海にある伝説「日本書紀」神武天皇の条二年(192)夏六月朔、天皇が長門豊  浦津に駐伯中のところへ、神功皇后が赴かれ、途中、タダノミナトで船上にて食事をとられると、幾多の鯛が船側に集まり、皇后が試みに酒を注がれると、鯛はたちまち酔って、水面に浮かび漁師は思わぬ獲物に「聖王賞(たま)う所の魚」と歓喜したとて、毎年六月になると、多くの鯛がさながら、酔えるが如く、水面に浮かび上がり、名付けて「浮鯛」と呼ぶという。
 
★桜煮  生ダコの贓物をとり、充分に塩もみして洗いあげたのを、ブツ切りにして水気を切り、酒とミリンを煮たてた中へ入れて煮て、サクラ色になったところへ塩、砂糖、最後に醬油頽で味加減をする。
                      
★桜味噌  嘗め味噌の一種。麦麹を用い、アメ、サトウを多く加えて、キンザンジ味噌のように甘く創ったもの。
                        
★桜飯  水、酒、醬油を好みに加減して炊いた色ご飯のこと。仕掛けた米の上に煮出し昆布をのせ、水の引き加減に手早く引き出すと、飯の味が良くなる。関西では、好みの具を入れて、炊いたのを「炊き込みご飯」「色ご飯」があり、各家庭でもよくみかけるが、「桜飯」は、案外あっさりして、口あたりがいい。
                         
★桜餅  蒸し菓子のひとつ。江戸時代に柏餅の類似品として、長明寺内に売り出したのが元祖で、春時の名物になり、淡雅な風趣が江戸の人々の嗜好にかなった。もとは小麦粉の皮に小豆アンを包んで、上を塩漬けの桜葉でおおい、蒸したが後には皮に米粉を用いた。
                                  葛 城 陽 子