老舗歳時記 吉野寿司株式会社 大阪寿司
二寸六分の懐石といわれる箱寿司に込められた<吉野>の思いは、大量生産が主流の現代に、創業当時の日本の健全さと、技術を守り続けている。先祖から受け継いだ教えを大切に、最良の大阪寿司を今後もつくり続け、大阪の食文化をリードしていく。
●天保12年(1841)創業 177年前、水野忠邦が天保の改革を行った年。
船場にて旅籠屋<はたごや>を営んでいた吉野屋嘉助は、寿司屋に転業。
●三代目寅蔵 箱寿司を考案。
船場の旦那衆に大変喜ばれ、大阪中にひろがる。
晴れの日のお料理・芝居見物・お土産にと幅広く愛される。
●「䱹」の字 古来、中国の文献によれば、魚肉を飯の上において発酵させたものを意味する。
後に、鮨になる。
★店頭にかけている大正初期の看板。舟板に彫られた文字に金粉が残っている。
明治の老大家、比田井天来先生の蹟。
▲箱寿司 大阪寿司の代表は箱寿司。にぎり寿司と違って、箱寿司はフタ口、ミ口と分けて口に入れるので、寿司めし「シャリ」には、特に重きをおいている。「飯に六分の味」といわれるようにシャリの味でほとんど決まる。<吉野>では、西日本の有名な硬質米を使用。昆布だしをたっぷりと含ませて、炊く「おすもじ」は、噛みしめる程に美味しさが増し、時間が経っても美味しさが変わらないのが特長。具と共に、じっくりと噛みしめると、味わえば味わう程、寿司の真味がたっぷりと味わえ、これ以上のものはない。
<吉野>が米の次に、こだわり続けるのは、いわゆる「ネタ」といわれる「具」である。
◎活焼穴子(いけのやきあなご)天然の中で、最も美味といわれる30㎝のものを選りすぐって仕入れ、創業以来受け継がれてきたタレをかけ、ふっくらと焼きあげる。この永年に亘る穴子の美味が蓄積されたタレにより、芳しい秘伝の味となる。箱寿司・穴子細巻・上方ちらし等にふんだんに使われ、椎茸と共に<吉野>の味の要となっている。
◎活小鯛(いけこたい)活の小鯛に塩を打ち、酢でしめて一晩寝かせる。じっくりと味をしみ込ませる。
◎潰司椎茸(つぶししいたけ)九州は宮崎、大分産の潰司椎茸。肉厚の高級椎茸を5時間程かけて軟らかく炊き上げる。下ごしらえにも手間ひまかけて、伝統の味を造り上げる。
他に▲鯛、鯖。蟹、の各種棒寿司。▲竹皮、海老穴子蒸し等各種蒸し寿司がある。
梶 康子