のれん28,6.7.8.9月 海藻の四季
海に囲まれた我が国の人々は古くから海藻を食べてきた。海藻が食べ物として栄養価の高いものと科学的に認められる以前から、日本人の健康に大きく貢献していたのである。
初春のめでたさを祝う昆布、地方によっては海苔雑煮、春の海藻としては、モズクがある。これはホンダワラの一種で、酢のものが好まれる。また、雑炊にすると、とても良く雑炊の中での逸品といわれている。
ヒジキは漢字で鹿尾菜と書く。春のものだが、本当に美味しいのは、九月頃で、その頃は採りにくいので、春に採って干し乾かす。江戸時代では、ヒジキを日光に干し晒し、搗き砕いて米粒ほどにし。米、麦に混ぜて主食としたものだった。
ワカメは漢字で和布、若布とかにつくる。布というのが、海の中で布のようにひらひらしているからだろう。ワカメの旬は、山口県では二月~五月、熊本県では二月~四月、秋田県では十二月~二月、岩手県では四月~六月、和歌山県では十二月~二月、新潟県では十二月~四月と、文献にある。日本国中旅行してもワカメは、殆ど名産として、土産物屋に並んでいる。食べ比べも楽しみの一つである。今では年中ある。
夏の食生活になじみ深い寒天、これは海藻テングサからつくられている。テングサは中国では石花菜とよんでいる。テングサとはトコロテンの材料となる海藻という意味である。
寒天は江戸時代に京都の伏見で工夫されたもので、伏見の近くの黄檗山万福寺の隠元禅師が名付け親だとされている。この寒天が菓子の羊羹に使われるようになり、練羊羹が盛んに作られるようになった。
フノリは昭和の始め頃までは、家庭で使われた海藻で、着物を洗いはりする時のノリ付けする時に使われた。
アラメは一名をクロメともいい、ヒジキと同じように、油でいためる。
我々が、日常最も食べ馴染んでいる海藻は、昆布とワカメ、ノリであろう。アサクサノリは、関東で、昆布は関西で好まれていたが、戦後、東西共に、両者の海藻の良さが、理解され、使われるようになった。昆布は、トロロコンブやオボロコンブに加工されている 。 塩昆布、酢昆布、菓子昆布、は、ワカメ、ノリと共に我々の食生活の必需のものとして、四季の海藻として、重宝されている。 東 雲 宣 子